オーストラリア医学部、へき地医療研修の診療能力検査

この記事の目次

 

(2)手を怪我した53歳の男性

<シナリオ>53歳の男性が、チェーンそうで右手の甲に切り傷を負い、クリニックに訪れました。男性は、4年前にブドウ糖負荷試験(ブドウ糖投与前8.2、投与2時間後13.5)を受けていましたが、その後の再診歴がありません。あなたは町医者です。どうしますか?

 

検査官に質問すれば与えられる情報

問診

  • 事故の内容(木を切っているときに手を滑らせて、右手の甲にかすり傷。軽傷だが、念のためにクリニックに)
  • 糖分・脂質高めの食事
  • 長時間の机作業
  • 糖尿病の症状(多飲、多食、多尿、足の感覚異常)
  • 処方薬無し
  • 家族歴:2型糖尿病
  • 破傷風ワクチン:5年前
  • 喫煙:毎日1箱、20年間

 

身体検査

  • BMI 32.0
  • 神経学的検査:異常なし
  • 心臓系・呼吸系検査:血圧145/90
  • 目の検査:異常なし
  • ブドウ糖血液検査:11.3
  • 尿検査(ブドウ糖有)

 

医療検査

  • 一般的血液検査:異常なし
  • 血糖値:11.2
  • HbA1C 8.2%
  • コレステロール(LDL):3.0
  • Albumin/Creatinine:250

 

それでは、ぼくが行なったことをすべてお話しします。

 

ぼくが実際にやったこと

右手の傷

診断:軽傷

説明:感染病の可能性

治療:傷のドレッシング、抗生物質(Oral cephalexin)

フォローアップ:特になし

 

禁煙

説明:体への影響。経済的負担(オーストラリアのたばこは1箱40ドルぐらいする)。治療薬(Bupropion, Vareniclineなど)があることも伝える。

 

高血圧

問診:食生活(塩分低減)、体重減量

説明:体への影響。

検査:なし

治療:ACE Inhibitor

フォローアップ:毎日家で血圧をチェックしてもらう

 

糖尿病

説明:糖尿病の再検査および治療が必要なことを伝える

検査:FBC, UEC, Fasting Glucose, HbA1C, Fasting Lipid, Iron study

治療:食生活改善、体重減量、Metformin (500mg od)、紹介状(糖尿病教育者、検眼医)

フォローアップ:3~4か月ごとの血液検査(Glucose, Lipid, HbA1C)、抗糖尿病剤の最適化

 

ぼくがやらなければいけなかったこと

治療:患者さんが決められたとおりに薬を摂取しているかの確認。

 

ぼくが学んだこと

 

2回目の検査はある程度上手く行ったと思う。失敗した1回目の能力検査から学んだ教訓「分からない時は、シニアの医者にアドバイスを求めたり、医療ガイドラインに従って医療行為をすること」を、2回目の能力検査で使わせていただいた。それによって、「この学生は安全だな」という印象を試験官に与えることが出来た。たぶん、パスはしているはずだ。

 

自分の頭で考えながら失敗したからこそ大きな収穫を得ることができた「へき地医療研修の診療能力検査」のお話でした。ご精読ありがとうございました。

 

 

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ごとうひろみち
『高校中退⇒豪州で医者』をいつも読んでいただき誠にありがとうございます。著者・ごとうひろみちに興味を持ってくれたあなたのために、詳しい自己紹介を←ここでしていますので、どうぞご覧ください。

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