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オーストラリアの医師免許を仮免から本免に変える手続き
オーストラリアの医師インターンシップは、ハイリスク・ローリターンのプログラムである。
何がハイリスクなのかというと、インターシップ中に「君は医者には向いていないね」という烙印を押されてしまうと、医師免許の更新ができなくなるのだ。そう、医師として働く資格を失ってしまうのだ。
よっぽどのことが無い限り(例えば、先輩医師に相談をせずに医療行為をして患者さんを死なせるとか)、インターンシップを落第することはないらしい。それでも、頑張って医学部を卒業したにも関わらず、医師としての資格を失うかもしれないという可能性は、インターン医師を怯えさせるには十分な材料である。
だからといって、ビクビクしながら働いていても何も好転しない。どうせやるなら全力でしかも楽しむことを最大の目的にしながら、二度とは戻ってこない医師インターンシップの時間にぼくは取り組んできた。インターンの仕事はとても大変だったが、同僚、患者さんとその家族とのつながりを通じて、自分が医師としてだけでなく人間として成長している実感を得られたことは、何物にも代えがたい人生からの贈り物である。
ぼくは「オーストラリアで温かい医者になる」という夢を実現するために、インターン医師として次の5つの研修先で働き、それぞれのローテーションでインターン医師として合格の評価をいただいた。
一般内科 (General Medicine)(リンク)
移植外科 (Transplant Surgery)(リンク)
救急医療 (Emergency Medicine)(リンク)
急性疾患医療 (Medical Assessment Unit)(リンク)
整形外科 (Orthopaedic Surgery)(リンク)
全てのローテーションで合格すると、最終的に雇い主の病院側からオーストラリア医療管理会(Australia Health Practitioner regulation agency)にインターン医師プログラムの合格通知が通達される。
インターン医師の医師免許は Provisional registration と呼ばれ、文字通り仮免である。その仮免を正式な免許...
オーストラリア医師、レジデンシーを振り返る(パート1:整形外科)
ぼくは「オーストラリアで温かい医者になる」という夢を持っている。ぼくはその夢を叶えるべく、オーストラリアの医学部を卒業し、インターン医師として次の4つの研修を無事修了した。
一般内科 (General Medicine)(リンク)
移植外科 (Transplant Surgery)(リンク)
救急医療 (Emergency Medicine)(リンク)
急性疾患医療 (Medical Assessment Unit)(リンク)
オーストラリアのインターン医師の仕事はハイリスク・ローリターンで、インターンシップ中に医師失格の烙印が押されると、医師として契約が更新できなくなる(つまり、医者として働けなくなる)。その意味では、医学部で留年しても次年チャンスがあるが、インターン中に失敗してしまうとそこでキャリアの道は閉ざされてしまうので、とてもハイリスクである。
ちなみに、オーストラリアのインターンシップの期間は大体2~3年ある。生まれたてホヤホヤ1年目の医師はインターン(aka Junior Medical Officer、JMO)と呼ばれ、2年目以降はレジデント(aka Resident Medical Officer、RMO)と呼ばれる。
レジデント医師はインターン医師に比べ、幅広い臨床ケースや病院の業務システムについて慣れている。それでも、レジデントもインターンと同じ業務をこなす。レジデントとインターンがこなす業務のことは過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』に触れたので、詳しいことを知りたい方はこちらを参照ください。
ぼくのオーストラリアにおけるレジデント医師研修は、次の9つのローテーションから構成されていた。
整形外科(Orthopaedic Surgery)(この記事)
コードブルーチーム(Charlie's Afterhour...
オーストラリアの医師インターンシップを振り返る(パート4:急性疾患医療)
ぼくは「オーストラリアで温かい医者になる」という夢を持っている。ぼくはその夢を叶えるべく、オーストラリアの医学部を卒業し、インターン医師として働いている。
オーストラリアのインターン医師がやることは、研修先の専門のうんぬんにかかわらず、大体同じような仕事をこなす。このことは過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』に触れたので、詳しいこと知りたい方はこちらを読んでみてください。
ぼくのオーストラリアにおける医師インターンシップは、次の4つのローテーションから構成されている。
一般内科 (General Medicine)(リンク)
移植外科 (Transplant Surgery)(リンク)
救急医療 (Emergency Medicine)(リンク)
急性疾患医療 (Medical Assessment Unit)(この記事)
医者という仕事上、患者さんや医療関係者のプライバシーを保護することが最重要事項となる。そのため、ぼくがインターン医師として経験した笑いあり涙ありのヒューマンドラマをブログで一般公開するわけにはいかない。それでも、ドラマの端々を恣意的に加工してプライバシーを保護することで、ぼくの記憶の中に残っている「インターン医師のレッスン」を皆様とシェアすることは可能かと思う。
それでは、ぼくがオーストラリアのインターン医師として経験した「急性疾患医療のレッスン」をお話ししよう。
Aさんに初めて会ったのは、病院のエレベータを待つ踊り場だった。
その日は急性疾患医療のローテンションの初日だった。ぼくは急性疾患医療病棟に向かうためにエレベータに乗った。エレベータのドアが開いた瞬間、複数のセキュリティの男性と女性に取り押さえられているAさんの姿が目に入ってきた。
Aさんは16歳。近所の高校に通う学生だ。学校の成績はトップグループに入り、部活はネットボールの副キャプテンを務めている。学校での友達関係も良好なようで、仲がいい友達が7,8人いて、Aさんはリーダー的な存在だ。
Aさんが病院の踊り場で取り押さえられていたのは、病院から抜け出して自殺を図ろうとしたことが原因だった。Aさんはエレベーターの踊り場で「お願いだから死なせてください」と大粒の涙を流しながら叫んでいた。
そんなAさんは先日、両親に連れられて救急病棟に運び込まれた。ご両親の話によれば、ここ5か月間ほど食事を取ることを拒否し、体重が3か月の間に60キロから45キロまで減ったのだという。Aさんの身長は170センチぐらいなので、BMIが20.8から15.6まで落ちたことになる(健康的なBMIは18.5から24.9)。
出典:healthyplace.com
急性疾患医療病棟には神経性無食欲症の患者さんが頻繁に入院する。神経性無食欲症は精神科の治療が必要になるのだが、患者さんが急患で運び込まれた場合、まず経鼻胃チューブを入れてゆっくりと食事を与え、栄養と電解質の補充などを行わなければならない。腹が減っては戦(精神科治療)はできぬ、というわけだ。
Aさんが食事を拒否するようになったの約5か月前。学校の知り合いから「痩せる薬」を売ってもらうようになってからだ(薬の正体は忘れてしまったが、おそらくベンズフェタミンだったと思う)。
入院してきた当初、Aさんの意識は朦朧としていた。しかし、数日間の経鼻胃チューブの食事を取ると、意識の状態も回復し、すこしずつ元気になっていった。
Aさんは数日の食事のおかげでエネルギーを取り戻した。ただ、そのエネルギーは、自殺を図るための病院からの逃亡という形で発散された。Aさんが自殺未遂を起こしたのは初めてではない。Aさんを知る精神科の先生はそう教えてくれた。
Aさんのお父さんは近所の町の議員。お母さんは近所の大学で教鞭をとる准教授。姉さんがひとりいるが、姉はすでに家を出てシドニーで働いている。Aさんがまだ幼かった頃、両親はとても忙しく、Aさんはお姉さんと一緒に時間を過ごすことが多く、親の愛を受けていないと感じながら育った。
詳しい精神鑑定の話は控えるが、「親にすら愛してもらえない人間が、ほかの人から愛されるわけがない」という感情が、思春期に目まぐるしく変化する性ホルモンの波にのまれて、神経性無食欲症と自殺願望として顕在化したのだと精神科の先生は語ってくれた。
数日後、急性疾患医療病棟から精神科病棟に移送される途中、Aさんは病院を逃亡しハイウェイを走っていた車に飛び込んで自殺した。
オーストラリアの医師インターンシップを振り返る(パート3:救急医療)
ぼくは「オーストラリアで温かい医者になる」という夢を持っている。ぼくはその夢を叶えるべく、オーストラリアの医学部を卒業し、インターン医師として働いている。
オーストラリアのインターン医師がやることは、研修先の専門のうんぬんにかかわらず、大体同じような仕事をこなす。このことは過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』に触れたので、詳しいこと知りたい方はこちらを読んでみてください。
ぼくのオーストラリアにおける医師インターンシップは、次の4つのローテーションから構成されている。
一般内科 (General Medicine)(リンク)
移植外科 (Transplant Surgery)(リンク)
救急医療 (Emergency Medicine)(この記事)
急性疾患医療 (Medical Assessment Unit)(リンク)
医者という仕事上、患者さんや医療関係者のプライバシーを保護することが最重要事項となる。そのため、ぼくがインターン医師として経験した笑いあり涙ありのヒューマンドラマをブログで一般公開するわけにはいかない。それでも、ドラマの端々を恣意的に加工してプライバシーを保護することで、ぼくの記憶の中に残っている「インターン医師のレッスン」を皆様とシェアすることは可能かと思う。
それでは、ぼくがオーストラリアのインターン医師として経験した「救急医療のレッスン」をお話ししよう。
Aさんが救急医療センターに来たのは、「医者にしか言えないこと」があるからだ。
その夜はたくさんの患者さんが来ていて、救急医療センターは蜂の巣をつついたような状態になっていた。
Aさんは30代後半の女性でTシャツと灰色のジーンズを履いていた。救急医療センターの順番待ちをしている間、椅子に座って両耳を手で押さえながら前後に体をゆすっていた。
Aさんの順番が来たとき、センターのベッドはすべて埋め尽くされており、ぼくは廊下に椅子を置いて、そこにAさんに座ってもらった。
「こんばんは。ヒロと申します。医師です。今夜はどうなさいましたか?」
「恐ろしい声が頭の中から消えないんです」とAさんは顔をこわばらせていた。見つめる目も虚ろだった。
「どんな声ですか?」
「息子にクンニをさせて自分が快感を得ろ!と大声で命令する声です」
「この声が聞こえ始めたのは今日が初めてですか?それとも長い間あるものですか?」
「3か月ぐらいです」
「3か月の間、息子さんに実際に何かをしましたか?」
「いいえ。でも、妄想の中で息子に暴力を振るって体が血まみれになっている姿を何度か見ました」
「妄想の中で、と言われましたが、実際に暴力をふるってはいないんですね?」
「はい。息子は私の妹のところに住んでいるので、私が暴力を振るうことはできないはずです」
「なぜ息子さんはあなたのところではなく、妹さんと一緒に住んでいるんですか?」
「私がヘロインやコカインなどの薬物をやっているからです」
「最後にそれらの薬物を使用したのはいつですか?」
「2か月ぐらい前です。それからやっていません」
「お酒は飲まれていますか?」
「いいえ、お酒も2か月前ぐらいから飲んでいません」
Aさんは、自分の息子に性的・身体的虐待をしようとしている自分を責めており、「自殺したい」とぼくに打ち明けてきた。
ぼくは精神科の医師に、Aさんが妄想と自殺願望が理由で救急医療センターにいることを伝えた。もちろん、非合法薬物使用歴があること、子供に身の危険の可能性があることも伝えた。
その夜は本当に忙しくて、ぼくは精神科の先生に電話をした後、別の患者さんを診なければいけなかった。どれぐらいの時間が経ったのかわからない。でも、ぼくは思い出したようにAさんの状態を確かめに廊下に戻った。Aさんの姿はそこにはなかった。
精神科の先生がどこかの部屋に連れて行って診ているのだろうと思い、ぼくはまた救急医療センターの渦の中に巻き込まれていった。
救急医療センターの先輩医師が、Aさんはどうなった?と聞いてきた。精神科の先生に診てもらっていると思いますが、とぼくは答えた。先輩医師は、先に来ていた精神病の患者さんがまだ精神科の先生に診てもらってないから、Aさんはまだ診てもらってないはずだ、といった。
ぼくの中で嫌な予感がした。
ぼくは救急センターのビデオカメラを確認した。廊下の椅子に座って前後に体を動かしていたAさんがゆっくりと立ち上がり、そのまま救急医療センターの出口からふら~と出ていく姿が映し出されていた。
やばい。自殺願望がある人を外に出してしまった。
ぼくはすぐにこのことを上司に伝えた。そして警察に電話をして、Aさんがその辺をうろついているかもしれないから見つけたら連れ戻してほしいと伝えた。
ぼくはAさんと一緒に住んでいる母親に電話をかけた。午前2時ぐらいなのでもちろん電話にはすぐにでなかった。それでも緊急事態だったので、ぼくは電話をかけ続けた。5分ぐらいすると、Aさんの母親が電話に出てくれた。
ぼくはAさんが病院からいなくなったことを母親に伝えた。すると、「娘は家に戻っていますよ」と言った。よかった、まだ生きてる。
相手が母親であったとしても、患者さんのプライバシーは守らなければならない。ぼくは医者ー患者の関係を崩さない範囲で事情を説明し、母親にAさんを病院に連れ戻してくれるようにお願いをした。
「娘はもう眠っています。今起こすと癇癪をおこすかもしれないから、明日でもいいかしら?」
「いいえ、娘さんは精神科の先生に早急に診てもらう必要があります」とぼくは答えた。
救急医療センターに戻ってきたとき、Aさんは機嫌がすこぶる悪かった。いろんなことを言われたけど、Aさんが無事に戻ってきてくれたので、ぼくは安心した。Aさんが挿管したカニューレをぼくの目の前で引っこ抜いて血まみれになったが、それでもぼくはAさんが病院にいることに心をほっとさせた。
まもなく、精神科の先生が問診に来てくれて、Aさんはそのまま精神病棟に入院となった。
オーストラリアの医師インターンシップを振り返る(パート2:移植外科)
ぼくは「オーストラリアで温かい医者になる」という夢を持っている。ぼくはその夢を叶えるべく、オーストラリアの医学部を卒業し、インターン医師として働いている。
オーストラリアのインターン医師がやることは、研修先の専門のうんぬんにかかわらず、大体同じような仕事をこなす。このことは過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』に触れたので、詳しいこと知りたい方はこちらを読んでみてください。
ぼくのオーストラリアにおける医師インターンシップは、次の4つのローテーションから構成されている。
一般内科 (General Medicine)(リンク)
移植外科 (Transplant Surgery)(この記事)
救急医療 (Emergency Medicine)(リンク)
急性疾患医療 (Medical Assessment Unit)(リンク)
医者という仕事上、患者さんや医療関係者のプライバシーを保護することが最重要事項となる。そのため、ぼくがインターン医師として経験した笑いあり涙ありのヒューマンドラマをブログで一般公開するわけにはいかない。それでも、ドラマの端々を恣意的に加工してプライバシーを保護することで、ぼくの記憶の中に残っている「インターン医師のレッスン」を皆様とシェアすることは可能かと思う。
それでは、ぼくがオーストラリアのインターン医師として経験した「移植外科のレッスン」をお話ししよう。
A君は13歳の少年で、生まれつき常染色体劣性多発性嚢胞腎(Autosomal Recessive Polycystic Kidney Disease:ARPKD)を患っており、腎臓が正常に機能していなかった。
多発性嚢胞腎のことを詳しく知りたい方はこちらをどうぞ(英語、日本語)
出典:theconversation.com
A君は、腎臓の機能である血圧のコントロール、尿の生成、赤血球の生成などが上手くいかず、高血圧、尿路感染症、貧血などに小さい頃から悩まされていた。
出典:slideshare.net
不幸中の幸いだったのは、A君のことを誕生の頃から診ていた総合医がこれらの症状を確認したときに、すぐに多発性嚢胞腎を疑い、検査を受けさせ、病気を正しく診断したことである。素早く診断したことで、腎臓移植の手配(遺伝検査や臓器リストなど)を速やかに行うことが可能となった。
それでも、難しいのは、いつ移植を行うべきか、という判断である。最近のデータによると、移植される腎臓は平均で15年ぐらい機能するという。この期間は、免疫抑制治療の発展によりさらに伸びることが予想されるものの、13歳のA君がほかの友だちと同じぐらいの寿命を全うするには、できるだけ移植を伸ばすことが大事な選択肢となる。
しかし、A君は度重なる尿路感染症にかかり、学校に行くこともままらなくなり、A君のお父さんが臓器移植の決断を踏み切ったのだ(お母さんは子宮内膜癌で亡くなられていた)。
Aくんの腎臓移植は、ぼくが普段勤務している病院のすぐお隣にある Perth Children's Hospital で行われた。ぼくが移植外科医に「オペ手術に参加しますか?」と電話をいただいたのが、夜10時ぐらいだった。シドニーから空輸で送られてくる移植用の腎臓が到着するのが午前1時ぐらいだから、その時間に病院に来てくれと言われた。
腎臓移植の動画(手術映像で気分を悪くされる方はお控えください)
https://www.youtube.com/watch?v=pke1WhLNoHc
手術チームははじめ、二手に分かれて作業をした。
移植外科医のフェローとレジストラは、A君の腎臓を摘出する作業を行った。
そして、移植外科医のコンサルタントとぼくは、送られてきた移植用腎臓の準備(腎臓を氷水に浸けながら、余計な脂肪を除去したり、血管や尿管を移植に適した形にカット)を行った。
移植外科医の先生は時々、この部位は名称は何ですか?と解剖学のクイズを出した。夜中に呼び出されて眠たそうにしていたぼくを叩き起こす目的があったのかもしれない。
A君から腎臓が摘出され、移植用腎臓の準備が終わったころ、「ヒロ、その腎臓を布にくるんで氷水に浸けたまま、ここに持ってきてくれ」と言われた。
ぼくがいま手の中に持っている腎臓が、A君の腎臓になるのだ。
移植外科医のコンサルタントとフェローが腎臓移植手術のほとんどを行い、ぼくは移植する臓器を乾かさないために冷たい食塩水をかけたり、余分な溶液や流れ出る血液などを吸引する作業を行った。
外科手術にはオペ専用の手術ナースがいるのだが、この手術を担当していた手術ナースはなりたてホヤホヤのようで、ぼそぼそとしゃべる移植外科医のコンサルタントの言っていることが聞こえず、何度も「何の器具ですか?」と気まずそうに尋ねていた。
手術ナースは熟練すると、その瞬間に行われている手術を見るだけで、外科医がつぎに必要とするだろう器具をある程度予測し準備することができる。手術器具の名前を言えるインターン医師は一人もいないのではないか?と思えるぐらい複雑である。
出典:eyeopener.accutome.com
動脈のクランプが外されると移植された腎臓に血液が流れ、灰色だった腎臓が濃い赤に変わっていった。手術が終わったのは午前3時半ぐらいで、建物の外に出ると外は冷えていた。白い息を吐きながら、移植外科医のコンサルタントに手術に参加させてくれたことを感謝し、家路についた。
手のひらには移植された腎臓を守っていた氷水の冷たさがまだかすかに残っていたが、出勤の時間が朝7時であることを考えると、その冷たさは布団の温かさに取って代わられていった。
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オーストラリアで総合医になる必勝方法
ぼくには、「オーストラリアで温かい医者になる」という夢がある。この夢の旅路に就くまでのその道は、控えめに言っても、紆余曲折で満ち溢れていた。
ごとうひろみちの紆余曲折の人生に興味のある方はこちらをどうぞ。
↓↓↓↓↓↓
オーストラリアの医学部を一年休学した後に卒業し、ぼくは現地の病院に就職した。現在は、医師3年目のペーペー Registrarをやっている。通常、オーストラリアで言うRegistrarは「専門医になるための訓練を受けている医師」を指すのだが、ぼくはいまService registrarという少し変わったポジションで働いている。Service registrarは、特定の専門のトレーニングプログラムに入っているわけではないが、病院側が働き手が一時的に足りていない分野に送り込むRegistrarのことを指す。オーストラリアの医師のハイラルキーに興味がある方は、過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』をどうぞ。
インター医師よりも経験はあるが専門をまだ決めかねている医師は、このService registrarとして働くことが多い。そして、Service registrarとしてインターン医師よりは重い責任を負いながら、どの専門に進むかを考えている。どの専門に進むのかを決める要因は千差万別で、流行りの専門を選ぶ医師がいたかと思えば、朝の問診が嫌いだからという理由で救急医療を選ぶ医師がいたりする。色々な思惑と背景を持った医師がいる以上、これさえ押さえておけば専門医トレーニング選びに後悔しない、というものはない。
ちなみに、医学部に入ったときにこんなフローチャートが授業で出てきたが、あながち間違いではないような気がする。専門を迷われている方は参考にするといいかもしれない(が、あまり気にする必要もないと思う)。
オーストラリアのインターン医師は、大きく分けて外科、内科、救急、精神科のローテーションを通じて医師としての一般的なスキルを磨く。3年という限られたインターンシップの期間中に、すべての科を回ることは不可能である。あらかじめ「~科で働きたいなぁ」と思っている医師は、病院側にその科に優先的に回してもらうことをお願いする。また、「~科には興味がない」ということを病院側に伝え、それ以外の科に回してもらうこともできる。
ぼくは医師として以下のローテーションを回ってきた。
1年目
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