ぐれたグレタさんをぼくが応援する3つの理由

この記事の目次

 

気候変動と人間生活

気候変動が及ぼす影響は、地球上の生態系の隅々にまで及ぶ。気候変動は、人間生活の変化だけでなく、食物連鎖の断裂、地質の劣化など、様々な変化を引き起こす。

気候が変動することそのものは自然なことである(四季があるように)。しかし、人間の経済活動が引き起こす地球温暖化がいずれ人間生活そのものを持続不可能なものにする、ということが多岐にわたる科学者たちによって叫ばれている。簡単に言うと、現状維持だといずれ破綻するかもしれないよ、という声がたくさんの科学者から上がっているのだ。

 

科学者と一般人のギャップ

残念ながら、科学者たちの声は一般の人たちになかなか届かない。その原因の一つに、科学者たちが自分たちの研究の時間を失うことを嫌い「データを見せるから自分で解釈してね」と丸投げすることがある。そしてもうひとつの原因に、現代のほとんどの人たちがデータやメソッドを読むことよりも結論だけを求めることがある。「データ」だけを提示する科学者と「結論」だけを求める一般人の間にギャップがあるのだ。

 

ギャップを埋める政治

そんな科学者と一般の人たちの間のギャップの橋渡しに大きな役割を果たしたのが、政治である。地球温暖化を政治的な舞台に上げたはアメリカ大統領選挙に出馬したアル・ゴア氏である。映画『不都合な真実』をご覧になった方も少なくないと思う。

 

 

政治嫌いがやる誤った判断

政治は、たくさんの人に声を届け問題を認識してもらい、問題解決のためにグループや企業に支援を行うという点で、とても重要である。

しかし、政治に根拠のない嫌悪感を覚える人の中に、気候変動が政治的に利用されているから気候変動は嘘だと誤って判断してしまうがいる(かなりの数で)。そうすることで自分のマインドを政治的なマインドコントロールから守ろうとしているのかもしれない。

残念ながら、そんなことをしても政治的なマインドコントロールどころか人間生活の破綻から身を守ることはできない。政治的議論から目をそらしても気候変動そのものの存在は消えないし、気候変動が人間生活の破綻を起こしてからでは、時すでに遅し、だからだ。

 

科学的データが示すこと

ぼくがここで主張したいことは政治を無視するなということではない。気候変動を無視するなということである。あなたがどんな政治的思想を持っていたとしても、気候変動を示す科学的データは変わらない。民主主義の人が読んでも、社会主義の人が読んでも、共産主義の人が読んでも、科学的データそのものは変わらない。

現時点での科学的データが示すことは、この記事の冒頭で書いたように、人間の経済活動によって引き起こされる気候変動が原因で、いずれ人間生活が持続不可能なものになる、という可能性である。

ぼく個人的には、科学的データがいまのままで問題ないよと示すのであれば、気候変動に取り組まなくてもいいと判断する。しかし、現時点での科学的データが、このままじゃ人間生活破綻するんじゃね?ということを右から左から、下から上から、訴えてくるので、気候変動は重要な問題であると判断しているだけである。

 

気候変動に取り組む活動家 グレタ・トゥーンベリ

2018年の後半、この気候変動の問題に取り組む、ある活動家が世界中で有名になった。その活動家の名前は、グレタ・トゥーンベリ(以下グレタさん)。

スウェーデン議会の前で、「Skolstrejk för klimatet」( 気候のための学校のストライキ )サイン、ストックホルム 、2018年8月

 

ぐれたグレタさん

グレタさんが活動を始めたのは時若干15歳の時。気候変動のための学校ストライキを行い、自国のスウェーデンスの国会議会の外で、気候変動に取り組むことを訴えたことがメディアなどで大きく取り上げられた。

グレタさんは、自分は学校に行って多くのことを学びたいのに気候変動に取り組まなければ自分たちも未来の子供たちも学校に行くことすらできない、という声を上げ、気候変動の活動を始めた。グレタさんのことをWikipediaで読むだけでもとても面白い。(事実の真偽は別にして)

 

ぐれたグレタさんをぼくが応援する3つの理由

行きたい学校へ行かずに気候変動の活動を始めた「ぐれたグレタさん」を、ぼくが応援する理由は3つある。

 

理由①科学データに基づいて行動していること

グレタさんは、気候変動活動の根拠を科学データに置いている

科学データを絶対視せずに実験手法を批判的に読むことのほうが大事ではあるが、多くの科学者たちの独立したデータが示唆する「人間の経済活動によって引き起こされる気候変動が原因でいずれ人間生活が持続不可能なものになるという可能性」は現時点ではかなり説得力がある。

強い根拠に基づいて行動することは問題解決につながるため、グレタさんの気候変動活動は奨励されるべきことである。問題を解決するには、根拠を持たないよりは持ったほうがいいし、行動しないよりは行動をしたほうがいい。根拠と行動が伴ったグレタさんを応援するのは自然なことである。

ちなみに、グレタさんは学校に行かずに「ぐれた」が、会社を休んで気候変動に取り組むぐれた社会人ぐれた老人になるにはどうすればいいんだろう?)がいても、ぼくは応援すると思う。ただ、学生と大人だと、社会で果たす責任の大きさが全く違うので、大人の場合は批判される度合いがもっと大きなものになることは容易に想像できる。

 

理由②精神疾患の社会的立場の創出に貢献していること

グレタさんは、アスペルガー症候群強迫性障害選択的無言症を患っている、と言われている。

 

 

現代社会における精神疾患の一般的な扱いは、床に落ちたごみのようなもので、カーペットの下に掃いておけば見えなくなってそれで解決できると思っている人が少なくない。それでは、ユダヤ人が虐殺されたヒトラーのナチズム、中国人が虐殺された満州事変、ツチ族が殺されたルワンダ虐殺と、何の変りもない。

精神疾患はまだまだ分からないことが多く、健常者(どんな人を指すのかわからないけど、たぶん精神疾患をカーペットの下に掃く人)が持っていない能力が精神疾患患者には眠っているかもしれないと考える人もいる。

例えば、グレタさんが患っているアスペルガー症候群自閉症スペクトラム障害とも言われる)は、社会に大きな革命を起こした著名人の多くが患っている(いた)と言われている(その根拠がどこにあるのかわかりませんが、興味がある人はアスペルガー症候群を患う著名人のリストをどうぞ)。

アスペルガー症候群の能力は世界をより豊かにしてくれるという発想は、アスペルガー症候群は床の上のごみという考え方に比べてより許容的で、社会に多様性を生み出してくれる。

 

精神疾患、健常者、そのほかの脳の多様性(例えば男女の脳)を生かした社会を作ろうという発想を Neurodiversity という。まだまだエセ科学的なものが多いが、この研究が進めば社会だけでなく環境もより良くなるはずである。というのも、Neurodiversityを発展させると、人間だけでなくそのほかの動植物にもその考え方を適用できるからだ。

精神疾患を患うグレタさんが自分の能力を発揮して社会において大きな役割を果たすことは、いまの患者さんやこれから生まれる患者さんへの新たな社会的意義の開拓になる。だから、この点においても、ぼくはグレタさんを応援している。

 

理由③気候変動が及ぼす影響は未来の子供たちにまで届くこと

ぼくがグレタさんを応援するのは子供だからだと批判されたことがある。行動する若者を応援したくなるのはぼくの偏った価値観であることは否定しない。財力や人のつながりが大人に比べて少ない若者が現代社会で、自分の中から湧き出てくる信念を貫いて行動し続けることは並大抵のことではないのだ。

しかし、ぼくがグレタさんを応援するのは、彼女が若者であるということ以前に気候変動に取り組む活動家であるという事実がある。もし彼女が科学的に根拠がない「HPVワクチンはてんかんを起こすから予防ワクチン反対」という活動をしていたら糾弾するだろう。

気候変動の活動家が若者であれ老人であれ、科学的なデータに「人間の経済活動によって引き起こされる気候変動が原因でいずれ人間生活が持続不可能なものになるという可能性」が強く示唆されている以上、ぼくが気候変動の活動を応援するのは理性的な判断である

大切なのでもう一度言います。気候変動の活動家が、ぐれた若者であれ、ぐれた社会人であれ、ぐれた老人であれ、強い根拠に基づいて行動する活動家をぼくは応援します

 

ぼくは遅かれ早かれ死ぬ。この記事を読んでいるあなたもそうです。自分たちの子供たち、そしてその次の子供たち、またその次の子供たちがどんな社会に住むようになるのかはわからない。人間は適応能力が高いので、今とはある程度違った自然環境・社会環境でも力強く生きていくことができるだろう。しかし、いま行われている人間の経済活動によって引き起こされる気候変動のせいで未来の人間生活が持続不可能なものになってしまうのは食い止めなければならない

 

そんなことを考えながらこんなブログ記事を書いて、毎日病院に出ては患者さんのケアに全力を注いでいる。

 

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ごとうひろみち
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