オーストラリア医師、レジストラを振り返る(パート1:リハビリ科)

 

ぼくは「オーストラリアで温かい医者になる」という夢を持っている。ぼくはその夢を叶えるべく、オーストラリアの医学部を卒業し、インターン医師として次の4つの研修を無事修了した。

  1. 一般内科 (General Medicine)(リンク
  2. 移植外科 (Transplant Surgery)(リンク
  3. 救急医療 (Emergency Medicine)(リンク
  4. 急性疾患医療 (Medical Assessment Unit)(リンク

 

レジデント医師(生まれたてホヤホヤ1年目の医師はインターン(aka Junior Medical Officer、JMO)と呼ばれ、2年目以降はレジデント(aka Resident Medical Officer、RMO)と呼ばれる)として働き始めたぼくは、次の9つのローテーションを修了した。

  1. 整形外科(Orthopaedic Surgery)(記事
  2. コードブルーチーム(Charlie’s Afterhour Team)(記事
  3. 精神科(老年)(Psychogeriatrics)(記事
  4. 救急科(Emergency Medicine)(記事
  5. 神経科(Neurology)(記事
  6. 腎臓科(Renal medicine)(記事
  7. リウマチ科・免疫科(Rheumatology Immunology)(記事
  8. 精神科(Psychiatry)(記事
  9. 救急科(Emergency Medicine)(記事

 

 

しっかりとした時期は覚えていないのだが、精神科のレジデント研修を終える数週間前だったと思う。つぎのリハビリ科のレジデント研修に向けてリハビリ科関連の書籍を読んでいた時だった。突然、病院の人事部の人から電話がかかってきた。「ヒロ、リハビリ科にレジストラ(Registrar)がいないから、レジストラにならないか?」と・・・心臓がキュッとなったことを覚えている。

 

どちらもレジで始まる役職なのでわかりづらいかもしれない。分かりやすく例えると、「レジストラ(Registrar)=上司」レジデント(Resident)=部下」となる。具体的に言えば、レジストラとレジデントの大きな違いは、「病棟にいる患者さんのケアに関する決断」をするか(レジストラ)しないか(レジデント)である。

レジストラは疾患に関する臨床的決断を下し、レジデントがその決断をもとに血液検査、イメージング検査、薬物の処方などを実行に移す。言い方を変えれば、レジストラは、患者さんの生死にかかわる臨床決断の意思決定を下すため、そこに発生する大きな責任を直接負う。それに対し、レジデントは、レジストラの臨床判断に基づいて行動するため、レジストラほど大きな責任を心理的に感じることはない(もちろん、インターンもレジデントも医師である以上、かなりのストレスを感じるのは事実)。

 

電話に話を戻すと、「リハビリ科は急性疾患を扱うことが比較的少ないから、レジストラとして働き初めるには最適な研修先だよ。ヒロは、これまで回った研修でも評判は良いし、もうそろそろレジストラになってもいい時期じゃないかな?」と人事課の先輩医師。ぼくは受話器を片手に少し黙りこんだ。

正直、レジストラとレジデントの責任の差は大きい。レジストラは病棟のすべての患者さんの臨床状況を把握して意思決定を下さなければならない。それに対し、レジデントは患者さんの状況をそこまで理解していなくても、レジストラの指示に従っている限り仕事の責任を果たすことができる。レジストラとレジデントの差を乗り越えるには(医師ならわかると思うが)、自分の能力の限界を認め、それでも責任を負えるか、という恐怖に立ち向かわなければならない。自分の臨床スキルの欠如で自分の患者さんが死ぬ。この責任を負う選択をした医師のみが、レジデントからレジストラへと成長していく。

 

ぼくはこれまで、人生の岐路に立った時、次のことを自問してきた。

どちらの道が困難か?

そして、答えはいつも同じだった。

より困難な道を常に選択してきた。

 

これは、絶望していた高校中退時代に出会った、ロバート・フロストの

Two roads diverged in a wood, and I—
I took the one less traveled by,
And that has made all the difference.

という詩が、いまでも心の中に残っていて、ぼくの背中を押してくれるからだ。

 

ぼくは、「レジストラになります」と答えた。受話器を握っている手はじんわりと汗をかいていた。

 

ぼくのオーストラリアにおけるレジストラ医師研修は、次のローテーションから構成されていた。

  1. リハビリ科(Rehabilitation medicine)(この記事)
  2. 急性疾患医療(Acute Medicine)(記事
  3. 心臓病科・心疾患集中治療室(Cardiology, Coronary Care Unit)(記事
  4. コロナウイルス病棟(COVID ward)(記事
  5. リハビリ科(Rehabilitation medicine for gerontology and neurosurgery)(記事

 

医者という仕事上、患者さんや医療関係者のプライバシーを保護することが最重要事項となる。そのため、ぼくがレジストラ医師として経験した笑いあり涙ありのヒューマンドラマをブログで一般公開するわけにはいかない。それでも、ドラマの端々を恣意的に加工してプライバシーを保護することで、ぼくの記憶の中に残っている「レジストラ医師のレッスン」を皆様とシェアすることは可能かと思う。

それでは、ぼくがオーストラリアのレジストラ医師として経験した「リハビリ科のレッスン」をお話ししようと思う。

 

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『高校中退⇒豪州で医者』をいつも読んでいただき誠にありがとうございます。著者・ごとうひろみちに興味を持ってくれたあなたのために、詳しい自己紹介を←ここでしていますので、どうぞご覧ください。

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