Tag: 2年生
オーストラリアの医学部2年生が受ける12の客観的臨床能力試験(OSCE)
最終試験は、
Objective Structured Clinical Examination (OSCE)と
筆記試験だった。
OSCEは、
パースで最も新しい
Fiona Stanley Hospitalで行なわれた。
10分間のOSCEステーション(診察室)があり10個あり、
ステーションの間に1分間の休み時間がある。
試験で問診や身体検査する人は、
実際の患者さんだったり役者さんだったりする。
ぼくが受けたOSCEのステーションは、以下の内容だった。
身体検査:GALS (Gait, Arms, Legs, Spine)
身体検査:Neuro (Lower limb)
問診:PTSD
問診:Depression & Suicide Assessment
実技:Suturing
問診:Deep vein thrombosis...
オーストラリアの医学部2年生が受ける「総合医」の教育
総合医 @ Grand Prom Medical Centre
ぼくは2年生の一年間、
Grand Prom Medical Centreの
Dr. Brittoさんに総合医の師事をした。
合計で7回の訪問を行い、
一日約5時間ぐらい
患者さんと医師の問診を見学させてもらった。
もちろん、見学だけでなく、
患者さんに身体検査などをおこなったり、
患者さんの症状を鑑別診断したりした。
性感染症の検査やワクチン注射なども行なった。
一日の訪問が終わると、
Dr. Brittoさんにぼくのパフォーマンスの良し悪しを
点数として評価してもらい、
その成績表を医学部に提出した。
総合医の良さは、
患者さんの症状の多様性にある。
同じような症状を持つ患者さんが
一日のうちに重なることはまず無い。
足のつめの巻き込みに関するものから、
自殺願望を訴える患者さんまで、
本当にさまざまな患者さんが
総合医に訪れる。
時には、教科書でしか見たことがない
Ulnar clawの症状も実際に目にすることができた。
患者さんに「申し訳ないが感動した」と伝えたら、
I’m glad this total nuisance can have any value.
と患者さんは笑って言っていた。
医学部の授業の一環で、
総合医に慢性的な症状を持つ患者さんを紹介してもらい、
一年間患者さんとコンタクトを続け、
最後に病態の経過を含む
患者さんの総合的な評価を発表する宿題があった。
ぼくの患者さんは、
ひざと背骨の慢性関節痛に悩んでいる老年の男性だった。
とてもユーモアのある男性で、
いつもビールを飲めと勧められた(自分は飲まないのに)。
ビールが見つかって
医学部を退学になる勇気は無いと伝えると、
ジンジャー・エールをグラスに注いでくれた。
自分で買って飲むよりも、
人の家で出されたジンジャ・エールは
なんであんなに美味しいのだろう?
総合医訪問の最後である7回目が終わると、
最終試験が近づいていたにもかかわらず、
ぼくはスカボロビーチに座り、
村上春樹氏の
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
を読んだ。
目の前をふと見ると、
波は動いているのに
音がいっさい消えていた。
村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
オーストラリアの医学生が受ける精神科の研修
精神科@Fremantle hospital
精神科で出会った患者さんは、
なぜか心に残っている人ばかりである。
2年生の医学生が出会った精神科の患者さんたち
(ケース1:男性A、45歳、薬物と幻聴と統合失調症)
(ケース2:女性B、37歳、失禁と夢とうつ病)
(ケース3:女性C、47歳、想像妊娠と妄想型統合失調症)
(ケース4:男性D、65歳、怒りと妄想型統合失調症)
ぼくが出会った患者さん達は、
躁うつ病、うつ病、統合失調症、
薬物中毒、人格障害などを患っていた。
精神科に興味があるぼくだが、
正直Garbage In, Garbage Out的な
Quick fixの手法でしか治療を行なわない
現代の精神科のやり方は、
ぼくが学びたかった治療法ではなかった。
それでも、
世界中の曇り空が顔の周りを覆っていた
うつ病患者さんが、
電気けいれん療法(ECT)後に
明るい表情を取り戻したのを見ると、
一概にも誤ったやり方ということも言えない。
うーん、
精神科の道を志すか、
どうしよう。
ECTは野蛮だという批判の対象に
さらされることがありますが、
精神科の中で
最も効果があり安全な治療のひとつなんだと
精神科の先生は教えてくれた。
https://www.youtube.com/watch?v=-T0mwzXHgvI
映画『カッコーの巣の上で』の強烈な印象がいまだにみんなの頭の中に残っているのかもしれませんね。
フリーマントル病院の近くには、
お洒落なカフェやにぎやかなマーケットがあった。
研修後にマーケットで
たくさんのフルーツを買って、
コテスロービーチで泳いだ後に、
木陰の下でフルーツをかじる瞬間は、
医学生として最高の瞬間のひとつだった。
https://www.youtube.com/watch?v=p4fPrmn2DpU
出典:www.goodreads.com
オーストラリアの医学生が受ける内科の研修
内科研修@Sir Charles Gairdner Hospital
内科研修の一環として、
病院の心臓病専門チームに師事した。
心臓病専門チームに配属された同級生は、
ぼくと女の子とふたりだった。
病棟の患者さんをふたつのグループに分け、
問診と心血管(系)身体検査を行い、
自分が得た情報を相手に正確に伝える訓練をした。
それ以外にも、
ペースメーカ埋め込み手術や
不整脈の治療である電気的除細動などに
立ち合わせてもらった。
電気ショックを与えるときに
Everyone, clear!
と言ったぼくは、
自分が医療ドラマに
吸い込まれていったかのような感覚になった。
おそらく、
責任の重さを正面から受け止められずに、
Derealizationしたのだと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=3gRazPZbYOo
出典:financialtribune.com
オーストラリアの医学生が受ける老人科&リウマチ科の研修
老人科&リウマチ科研修@Royal Perth Hospital
老人科とリウマチ科では、
おもに3Ds (Dementia, Depression, Delirium)、
Falls、Incontinenceについて勉強をした。
ぼくのマナーリズムは、
老人受けがいいようだ。
ゆったりとして柔らかに話し、
相手の言っていることを
真剣に聞くことがその理由のようだ。
正直、ぼく自身が少し
老化しているのも原因だと思う。
同級生たちの若者たちのように
早口にはしゃべれないし、
そんなに速く頭が回らない。
速く考えようとすると、
自分が万華鏡のメリーゴーランドに
乗せられた気分になり、
脳の保護機能スイッチが
自動的にオンになり、
思考が停止する。
研修中に大切な出会いもあった。
Ms. Janina Pasは、
第二次世界大戦中にナチによって
ポーランドからドイツに強制送還され
奴隷労働を強要された
戦争経験者である。
戦争中の体験を
著書『Janina’s War』に記している。
ぼくはMs. Pasと仲良くなり、
この本をサイン付きで頂いた。
宝物である。
Janina’s Warは
西オーストラリア図書館から
貸し出しが可能である。
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の写真
出典:matome.naver.jp
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ぼくには、「オーストラリアで温かい医者になる」という夢がある。この夢の旅路に就くまでのその道は、控えめに言っても、紆余曲折で満ち溢れていた。
ごとうひろみちの紆余曲折の人生に興味のある方はこちらをどうぞ。
↓↓↓↓↓↓
オーストラリアの医学部を一年休学した後に卒業し、ぼくは現地の病院に就職した。現在は、医師3年目のペーペー Registrarをやっている。通常、オーストラリアで言うRegistrarは「専門医になるための訓練を受けている医師」を指すのだが、ぼくはいまService registrarという少し変わったポジションで働いている。Service registrarは、特定の専門のトレーニングプログラムに入っているわけではないが、病院側が働き手が一時的に足りていない分野に送り込むRegistrarのことを指す。オーストラリアの医師のハイラルキーに興味がある方は、過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』をどうぞ。
インター医師よりも経験はあるが専門をまだ決めかねている医師は、このService registrarとして働くことが多い。そして、Service registrarとしてインターン医師よりは重い責任を負いながら、どの専門に進むかを考えている。どの専門に進むのかを決める要因は千差万別で、流行りの専門を選ぶ医師がいたかと思えば、朝の問診が嫌いだからという理由で救急医療を選ぶ医師がいたりする。色々な思惑と背景を持った医師がいる以上、これさえ押さえておけば専門医トレーニング選びに後悔しない、というものはない。
ちなみに、医学部に入ったときにこんなフローチャートが授業で出てきたが、あながち間違いではないような気がする。専門を迷われている方は参考にするといいかもしれない(が、あまり気にする必要もないと思う)。
オーストラリアのインターン医師は、大きく分けて外科、内科、救急、精神科のローテーションを通じて医師としての一般的なスキルを磨く。3年という限られたインターンシップの期間中に、すべての科を回ることは不可能である。あらかじめ「~科で働きたいなぁ」と思っている医師は、病院側にその科に優先的に回してもらうことをお願いする。また、「~科には興味がない」ということを病院側に伝え、それ以外の科に回してもらうこともできる。
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