総合医 @ Grand Prom Medical Centre
ぼくは2年生の一年間、
Dr. Brittoさんに総合医の師事をした。
合計で7回の訪問を行い、
一日約5時間ぐらい
患者さんと医師の問診を見学させてもらった。
もちろん、見学だけでなく、
患者さんに身体検査などをおこなったり、
患者さんの症状を鑑別診断したりした。
性感染症の検査やワクチン注射なども行なった。
一日の訪問が終わると、
Dr. Brittoさんにぼくのパフォーマンスの良し悪しを
点数として評価してもらい、
その成績表を医学部に提出した。
総合医の良さは、
患者さんの症状の多様性にある。
同じような症状を持つ患者さんが
一日のうちに重なることはまず無い。
足のつめの巻き込みに関するものから、
自殺願望を訴える患者さんまで、
本当にさまざまな患者さんが
総合医に訪れる。
時には、教科書でしか見たことがない
Ulnar clawの症状も実際に目にすることができた。
患者さんに「申し訳ないが感動した」と伝えたら、
I’m glad this total nuisance can have any value.
と患者さんは笑って言っていた。
医学部の授業の一環で、
総合医に慢性的な症状を持つ患者さんを紹介してもらい、
一年間患者さんとコンタクトを続け、
最後に病態の経過を含む
患者さんの総合的な評価を発表する宿題があった。
ぼくの患者さんは、
ひざと背骨の慢性関節痛に悩んでいる老年の男性だった。
とてもユーモアのある男性で、
いつもビールを飲めと勧められた(自分は飲まないのに)。
ビールが見つかって
医学部を退学になる勇気は無いと伝えると、
ジンジャー・エールをグラスに注いでくれた。
自分で買って飲むよりも、
人の家で出されたジンジャ・エールは
なんであんなに美味しいのだろう?
総合医訪問の最後である7回目が終わると、
最終試験が近づいていたにもかかわらず、
ぼくはスカボロビーチに座り、
村上春樹氏の
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
を読んだ。
目の前をふと見ると、
波は動いているのに
音がいっさい消えていた。