飛行機の窓から
空港の屋上デッキを見ると
あいつらが手を振っているのが見えた。
飛行機はゆっくりと動き始め
まるで赤の他人が街ですれ違う時のように
無言で空港の建物から離れていった。
飛行機は滑走路に入り、
徐々にエンジン力を上げ
離陸の準備に入った。
ぼくの窓からはもう
空港の屋上デッキは見えない。
でも、あいつらはまだ手を振っていた。
飛行機に慣れないぼくは
離陸のふわ~という感じに
少しの不安と吐き気を覚えた。
ぼくの頭の中には
Mr. Big の Green-tinted sixties mind が
かすかに流れていた。
記憶にも残らない機内食を食べたぼくは
となりに座っていた女性と
記憶にも残らない世間話をした。
飛行機は乗り継ぎ便で
ぼくはジャカルタで一泊した。
不安の涙がぼくの頬を伝っていた。
パース国際空港に着くと
ホストファミリーが迎えに来てくれた。
当たり前のような笑顔がそこにはあった。
スワン川の景色は
曇りガラスを通したように
濃淡がすこしだけズレていた。