「高校の成績」と大人になって実現できる「夢」の関係について、ぼくが断定的な議論をすることはできない。というのも、ぼくは高校を卒業すらしていないからだ。それでも、「小利口な人」はなかなか夢を実現できないというぼくの観察を裏づけるデータが発表された。
Eric Barker氏は書籍「Barking up the wrong tree」(←このイディオムの意味わかりますか?)の中で、Valedictorians rarely become millionaires(成績優秀で卒業した高校生が億万長者になることはほとんどない)と主張している。
その証拠として、アメリカの700人の億万長者の高校の成績を平均すると、GPA2.9(0~4の5段階評価。日本だと、3.9にあたる)になるという。成績優秀で卒業した高校生(valedictorians)の平均的な成績が3.6(日本だと4.6)なので、明らかに見劣りするというわけだ。(3.9の成績も、高校中退したぼくから見れば十分にすごいと思うが)
Barker氏の仮説によれば、成績優秀で卒業した高校生が億万長者になれない要因はふたつあるという。
成績優秀で卒業した高校生が億万長者になれない理由(1)
Barker氏によれば、高校で優秀な成績を取る生徒は、先生や学校が生徒に期待しているルールを敏感に察知し、そのルールに従うことで点数を稼ぐ傾向があるという。つまり、ルールに従って生きることを選択するため、億万長者になるために必要な「世界をあっと言わせるパラダイムシフト」を起こすことができないらしい。パラダイムシフトを起こすには、今の世界の常識の枠を超えて問題解決することが不可欠なのだ。
iPod, iPad, iPhoneなどで世界をあっと言わせるアップルの宣伝にはこんな言葉が使われたことがある。The people who are crazy enough to think they can change the world are the ones who do.(世界を変えられるという狂ったことを信じる者が、世界を変える)。
Barker氏によれば、高校を成績優秀で卒業する生徒は、この狂ったことを信じるタイプの人間ではないので億万長者になることはできない、となるのだろう。
成績優秀で卒業した高校生が億万長者になれない理由(2)
Barker氏があげる理由には、もっと現実的なものもある。一般的に、高校生は幅広い学科の勉強をこなす必要がある。数学が好きだから数学だけを勉強しておけば成績優秀で卒業できるわけではなく、数学以外にも国語、社会、生物、物理、英語など教科を勉強する必要があるということだ。つまり、高校を成績優秀で卒業するには、好きな科目だけでなく、興味のない科目も勉強しなければいけない。
しかし、社会における成功(億万長者など)を実現している人は、幅広くこなすことよりも、ひとつのことに情熱を傾けている。このことは、一番目の理由「世界をあっと言わせるパラダイムシフト」に深く関係している。
「世界をあっと言わせるパラダイムシフト」を起こすには、尋常ではないほどの情熱、努力、計画性、時間、資金が必要となる。パラダイムシフトをひとつ起こすだけで、こんなにも大きな代価を払わなければならない。ということは、幅広い分野で複数のパラダイムシフトを起こすことは、ひとりの人間の一生において不可能なのである。
結論
「高校の成績と億万長者の関係」を議論してきたが、導き出されるひとつの結論がある。その結論とは、社会における成功(億万長者など)を実現するには、世界をあっと言わせるパラダイムシフトを起こすために情熱、努力、計画、投資、行動をしなければいけないということだ。これであれば、高校中退者のぼくでも成功できるような気がする~。
注意点
今回紹介した書籍「Barking up the wrong tree」は、高校生の成績と億万長者の関係を議論しているだけの本ではありません。この本の大きなテーマは、「みんなが当たり前だと思っている成功の要因が実は間違っている」ということを伝えることです。
高校生の成績と億万長者の関係だけでなく、「協力することの重要性は、ギャング、海賊、連続殺人鬼から学べる」「自信をつけても問題解決にはならない」などの常識では想像できない成功の秘訣が議論されています。興味がある方は、面白い本なのでどうぞ。
Eric Barker – Barking up the wrong tree