(1)インド旅行
小さい頃から
医者になりたい
という夢は、
ぼくには無かった。
医者になることを考え始めたのは、
2006年のインド旅行が
きっかけだった。
ぼくがインドを選んだのは、
マザー・テレサさんがインドで設立した
「死を待つ人々の家」などを含む施設で
ボランティアをすることが目的だったからだ。
ニューデリーからコルカタへ
寝台列車に乗って移動したとき、
車内でフランス人の青年と出会った。
彼はコルカタに仕事関係で行くと言っていた。
彼と意気投合し、
一緒にボランティアをすることになった。
「死を待つ人々の家」に到着すると、
施設のリーダーである医師に担当が決められる。
ぼくがお世話させていただいたのは、
体が飢えたヤギのように痩せ細った、
20代後半ぐらいの男性だった。
ぼくは、
薄いマットレスのうえで
横になっている彼に水を飲ませたり、
身の回りの掃除などを行なった。
彼の肌が乾燥して皮膚がカサカサだったので、
体にクリームを塗って
軽くマッサージをしようかと聞くと、
彼はとても弱々しくうなずいた。
彼の体に触れると、
彼の体が高温であることが分かった。
ぼくがクリームを塗って
マッサージを終えると、
彼は静かに瞬きと
わずかな会釈で感謝をしてくれた。
彼はぼくをじっと見つめていた。
次の日、
「死を待つ人々の家」に戻ると、
男性の姿は無かった。
リーダーの医師に聞いてみると、
「彼は昨夜亡くなったよ。
エイズだったんだ。」
と教えてくれた。
彼は誰かに看取られながら
最後を迎えたのだろうか?
独りで死ぬべき人なんて、
この世にいないのだ。
(2)東北地方太平洋沖地震
医者になることを強く決意したのは、
2011年3月11日に起きた
のボランティアに行ったときだ。
RQ市民災害救援センターが行なっていた
被災者支援のボランティアに
参加させていただいたとき、
自分の存在のあまりの無意味さに打たれ、
すこしでも苦しむ人の
役に立てるような人間になりたい
と思うようになった。
人は死の苦しみを選べない。
でも、苦しんでいる人の周りにいる人には
選択の余地がある。
ちなみに、
という言葉は、
マザー・テレサさんのものかと思ったら、
ノーベル平和賞受賞者の
エリ・ヴィーゼルさんのもののようですね。
知りませんでした。
もうひとつ有名な
という言葉は、
マザー・テレサさんが
発したもののようです。