Rural Clinical School が始まって
3か月が経った。
最初の1か月目は
Broome Hospitalで外科・内科の医療研修。
2か月目は先住民アボリジナル・ピープル専門クリニックである
Broome Regional Aboriginal Medical Service (BRAMS)で医療研修
(日本の学校で学ぶ「アボリジニー」という言葉は差別用語にあたる)。
3か月目は、Broome Hospitalに戻り、
BRAMSでの医療研修は、
BRAMSクリニックがオープンする朝8:30に始まる。
同級生の女の子と一緒にBRAMSへ行き、
患者さんと同じドアからBRAMSの建物に入る。
BRAMSのロビーに入ると、
野球スタジアムに置かれているような
5人掛けの椅子が4列並べられている。
患者さんは、
鏡張りの受付の向こう側にいるスタッフに
診察願いをする。
BRAMSの建物はエアコンがとても効いているため、
手続きをしたらすぐに外に出て
自分の名前が呼ばれるのを待つ患者さんが多い。
20℃(BRAMSの室温)vs 35℃(外の気温)、
あなたならどちらを選びますか?
医学生であるぼくと同級生の女の子は、
忙しそうに受付対応をしているスタッフに笑顔で手を振り、
医療エリアのセキュリティドアを開けてもらう。
スタッフが笑顔でドアを開けてくれたことはない。
BRAMSでの医学生の基本的な1日は以下の流れである。
8:30 BRAMS入り&医学生の出入りノートに記帳する
~12:00 患者さんの問診&総合医(GP)へのハンドオーバー
~12:30 昼食
~15:30 患者さんの問診&総合医(GP)へのハンドオーバー
15:30 BRAMS入り&医学生の出入りノートに記帳する
BRAMSはとても勉強になるところだった。
これまでの病院医療研修の場合、
ぼくらが患者さんに対面するときはすでに、
医者、看護師、その他の医療スタッフのケアを受け、
診断も治療も行われている状態だった。
BRAMSの研修はそれとは違い、
医者もまだ診ていない患者さんを相手に、
医学生が問診、身体検査、診断試験、診断、治療を行うのだ。
もちろん、診断試験と治療はお医者さんの指導の下で行われるが、
問診と身体検査は医学生が患者さんとマンツーマンでおこなう。
BRAMSは先住民アボリジナル・ピープル専門クリニックであると書いたが、
Broomeに永住している日本人、日系オーストラリア人も診療を受けに来る
(なぜ多くの日本人がブルームにいるのかはこちら)。
日本人の名前が患者さんリストにあると、
ナースのレネー(仮名)が
「Hey Hiro, you’ve got a VIP.」と言って、
ぼくを自動的に患者さんの担当にしてくれた。
BRAMSの医療研修のおかげで、
恐る恐るやっていた血液採取は
自信が持てるようになった。
また、刑務所に服役している囚人の問診や身体検査、
先住民学生の身体検査(Form 715)、妊婦管理、人工透析
などにも参加できた。
一番記憶に残っているのは、
患者さんの耳の中にいたゴキブリを取り除く作業である。
先住民の中には、芝生の上で一夜を明かす方が結構いらっしゃるのだ。
BRAMSの医療研修は、
これからぼくがどんな医者になりたいかということに
大きなヒントを与えてくれたような気がする。
患者さんが次から次へと流れていくベルトコンベヤー式の大きな病院よりも、
長い年月をかけて患者さんに密に関わっていく小さな診療所のほうが、
ぼくは幸せなのかもしれない。
ドクター・コトーのことはよく知らないけれど、
たしか僻地の住民と密につながっていくドクターの話ではなかっただろうか。
ぼくは、リアル・ドクター・ゴトーになるのだろうか?
この記事の写真は、
先住民アボリジナル・ピープルの旗である。
先住民の方は、ぼくらが知っているオーストラリアの旗ではなく、
この旗を国旗としてみている。
旗に使われている3つの色にはそれぞれ意味があるので、
興味のある方はこちらをどうぞ。