オーストラリアで医者になる
そう心に刻み込んだのは
福島震災後のボランティアだった。
津波が無造作に積み上げた
瓦礫の下から漂ってくる
生き物の腐乱臭
蓋が空いたように
半分が宙に浮いている
鉄筋のビニールハウス
畳の上に座って
恥ずかしそうな笑顔を見せる
全裸の若い女性の写真
助けようとして
伸ばした手が届かずに
津波に飲み込まれていった奥様
自然はいまだに
ぼくの心に安らぎと怒りを
アンビバレンスを与える
オーストラリアの医学部
受験した日本人の話は見つからず
ぼくは独りで対策を練り始めた
受験会場に
ぼくの座るはずの椅子が
無かった共通一次試験
言いたいことも言えず
あまりにも情けなくて
泣きそうになった2次面接
3回受験して
3回合格した医学部
はやく医者になれ?