ブログの質問箱に「オーストラリアで医者として働きたい」というコメントを、日本のお医者さんからよくいただく。
ほとんどの場合は手続きに関する質問であるため、ぼくはオーストラリア医学協会(Australian Medical Association)とオーストラリア医療関係者規制当局(Australian Health Practitioner Regulation Agency)のページを紹介し、自分で調べていただくことにしている。そうすることが一番確実で安全あるからだ。
とは言え、わざわざ質問をしていただいたのに、「自分で調べてください」という返答をする自分はなんだか味気が無いなぁと思っていたので、今回は「オーストラリアで働きたい日本のお医者さん」に耳寄りな情報をお伝えしたいと思います。
オーストラリアの保健省が2019年に発行した文書に「National medical workforce strategy scoping framework 2019」というものがある。その文書の目次の中に、7 Priority workforce issues and contributing factors というセクションがある。
1 Executive summary … 7
2 About the National Medical Workforce Strategy … 13
3 Australia’s medical workforce and workforce planning … 17
4 Why a National Medical Workforce Strategy? … 20
5 The vision and strategic objectives for the National Medical Workforce Strategy … 23
6 Guiding principles for the National Medical Workforce Strategy … 24
7 Priority workforce issues and contributing factors … 25
8 Conclusion and path forward … 54
9 Bibliography … 55
Appendix A: Potential opportunities to explore further … 58
Appendix B: Methodology … 62
そして、その中にこんなグラフを見つけることができる。
このグラフを使って政府が何を言いたいのかを簡単にまとめると、
1.麻酔科(Anaesthesia)や救急医療科(Emergency Medicine)の専門医は余っている
2.精神科(Psychiatry)、皮膚科(Dermatology)、眼科(Ophthalmology)、産婦人科(Obstetrics and Gynaecology)の専門医は不足している
3.この傾向は2030年により顕著になる(例外:麻酔科は余っているがその程度は軟化する)
ということである。
ただし、この数字は現在の医療現場を考慮し得られた数字である。もし、新しい病院が作られたり、既存の病院がなくなったりしたら、この数字は変化する。そのほかにも、経済状態、政府の方針、人口の増減などにも大きな影響を受ける。そのため、この評価を鵜呑みにすることはできない。それでも、「オーストラリアで働きたい日本のお医者さん」には参考になる文書ではないかと思う。それに、この文書に基づいて自分の専門家を決める現地の医師もたくさんいる。
上のグラフのほかにも、オーストラリアの専門医の現状を知るためのデータがたくさん提供されているため、「オーストラリアで働きたい日本のお医者さん」はぜひとも目を通してみてほしい。あっ、やっぱり最後は「自分で調べてください」となるのね。味気ない自分でスミマセン。
結論:もし、あなたが精神科、皮膚科、眼科、産婦人科の専門医としてオーストラリアで働きたいと考えているのであれば、少なくとも2030年までは麻酔科や救急医療の専門医に比べて職に就きやすい(だろう)。