ジャカランダの花びらが舞う
大学のキャンパスを歩いていると
時間の流れがすこしだけ塩味になる。
ロマネスク様式の建物である
ウィンスロップホールの中に入ると
その味が甘味に変わる。
誰もいないサンケン・ガーデンで
自分ひとりだけの演劇を開いていると
クックバラが甘さに惹かれて寄ってくる。
天然の緑色絨毯のうえで
広辞苑並みの教科書を読んでいると
あたまの中が酸味に変わる。
卒業研究で徹夜した
研究室のピペットマンに触れると
苦味がぼくを刺激する。
あなたと喧嘩したベンチに
ひとり座って学生の往来を眺めると
時間に微かな旨みが加わる。
シェアメイトの友達と
深夜のドライブや魚釣りに
行くこともあった。
買わないのに
毎週日曜日には
一緒に近所のノミ市に行って
置かれている商品を眺めた。
夏休み中に帰国している友達の
食料品を勝手に食べて
たわいのない喧嘩もしてみた。
そんな友達も
いまでは家庭と子供がいる。