よく買い物に行った
スーパーの隣に
古びれたたこ焼き屋があった。
黄色のビニール屋根に
「大阪名物タコ焼き」と
赤色のゴシック体で書かれている。
70代ぐらいの女性の
少し骨が浮き出た手は
右へ左へ鉄板の上を走っていた。
いつも香りだけを
無料でいただいていたので
今日はたこ焼きを買ってみる。
おばちゃんの手は
いつものように
右へ左へ鉄板の上を走っていた。
「お待たせ」
ぼくは店前でパックを開けて
アツアツのたこ焼きを口に入れた。
口の中に広がった味は
ぼくが大阪で食べた有名なたこ焼きよりも
明らかに美味かった。
「おばちゃんのが一番美味いわぁ」
「ほんま?ありがとうぉ」
おばちゃんは手ぬぐいで顔の汗を拭いていた。
ぼくが和光の理研に移ってからも
おばちゃんのたこ焼きの味は
ランキングトップを走り続けている。
「タコ焼き」の看板を見るだけで
大阪の古びれたたこ焼き屋で食べた
Deepな味が脳裏によみがえる。