オーストラリアの医学生が人として成長する課外活動

 

うちの大学(University of Western Australia) には、

UniMentorというシステムがある。

 

UniはUniversityの略。

 

 

Mentorは・・・

日本語で何というんだろう?

 

ジーニアス英和大辞典を見てみると、

「教師、指導者、師、指導教官、助言者」

と略されている。

 

どの訳も仰々しく、

このシステムには適訳でない。

 

ぼくなりの翻訳をすると、

「面倒見のいい上級生」になるかと思う。

もちろん、意訳である。

 

話はそれたが、

UniMentorとは、

右も左も分からない新入生に、

酸いも甘いも知っている(はずの)上級生が

いろいろ学校のことをアドバイスするシステムである。

 

大学側が新入生のためにおこなっている行事なのだが、

基本上級生が率先しておこなうボランティア活動である。

 

ぼくは今年で大学院2年生になる。

今年入ってくる新入生に、

学校に関する疑問や不安などをぶつけてもらって、

すこしでも医学部の勉強に専念できるよう

手引きをしようと思っている。

 

ぼくが一年生を終了した頃には、

入学者の約10%が退学した。

 

すべての退学者だとは考えていないが、

多くの退学者は勉強の大変さのせいで、

自分自身の能力に対する自信を失ってしまい

退学したのではないかと推測している。

 

ぼくも、

勉強のあまりの大変さに

「ぼくは医者に向いてないじゃないか?」

と何度も何度も自問した。

 

壊れたレコードのように繰り返される

この質問のせいで、

体全体から不安という汗が噴き出して、

あたまがおかしくなりそうになった。

 

大げさに聞こえるかもしれない。

 

でも、医学部生は、

そうでない人たちに比べ、

精神的・情緒的不安定に陥りやすく、

うつ病や不安障害の病にかかりやすい

というデータが多くある

(興味のある方はこちらをどうぞ)。

 

その上、

移民はうつ病や不安障害の病にかかりやすい

というデータもある(興味のある方はこちらをどうぞ)。

 

ぼくは、ふたつともに当てはまる。

 

この事実を

学校の授業の中で学んだ。

 

そして、予防のことも考えて、

ぼくは心理カウンセリングを率先して受けた。

 

その内容は別の機会に譲るが、

医学部の新入生にかかる心理的不安は

とても大きなものだということを理解している。

 

そこで、

ぼくは自分自身の経験をシェアすることが

新入生の役に立てば思い、

今年UniMentorになることを決めた。

 

UniMentorになるには4つの項目をクリアしなければならない。

  1. Online Training Quiz,
  2. The Cultural Competency Quiz,
  3. The briefing
  4. Booking into the Link-up

 

最初の3つは、

大学側が設けるUniMentor訓練コースのことである。

 

新入生からよくある質問にどう答えるか、

新入生にはどんなことを伝えなければならないかなど、

さまざまなことを学ぶ。

 

特に文化の問題は、

医者になるときにも大事な問題となる。

 

オーストラリアには、

さまざまな人種と文化の人たちがいる。

 

日本でよく耳にする

「人として・・・じゃないの?」

という表現がいかに高慢で

幼稚な表現であるかということを痛感するぐらい、

さまざまな考えを持つ人たちがいる。

 

異文化とどう折り合いをつけていくかということは、

医者としてとても切実な問題である。

 

異文化に敬意を払えるかどうかは、

患者の医者に対する信頼

もしくは不信感に直結するからである。

 

個人的には、

留学生を相手にUniMentorをしたいと考えている。

 

ぼくは永住権を持ってはいるが、

英語の力は、正直留学生と変わらない。

 

そんなぼくだからできるアドバイスがあると思っている。

 

ちなみに、

UniMentorは、

学期最初の3週間はかならず

Mentee(面倒見がいのある新入生)に会わなければいけない

(最低1週間に1回)。

 

何をするかは、

UniMentorとMenteeが話し合って決める。

 

いまのところは、

大学のキャンパスツアーをしたり、

コーヒーを一緒に飲んだり、

お薦めの教科書を紹介したりしようと思っている。

 

あと、カウンセリング・サービスのことも触れようと思う。

 

それでは、UniMentor Hiro 行ってきます。

 

 

追伸:質問があったので答えます。「わたしは医者に向いてないじゃないか?」とおなじように自問している医大生から、Hiroはこの質問にどのような答えを出したのかと聞かれました。ぼくは逃げました。つまり、この自問に答えない決断をしました。2年生になってからは、「向いているかどうかの問題は、医者になってから判断しよう。いま問うべきことは、なりたいかなりたくないのかということ。なりたいんだろう?なりたい。」という会話を自分の頭の中で、壊れたレコードのように繰り返しています。実際問題として、医学の世界は広すぎて個人が向いているかどうかを判断するのは無意味なような気もする。あっちがだめだったら、こっちに行けばいい、ということができるとてもまれな世界だからだ。

 

 

前の記事オーストラリアの医学部2年生はサプライズから始まった
次の記事オーストラリアの医学生が辞書について考えること
ごとうひろみち
『高校中退⇒豪州で医者』をいつも読んでいただき誠にありがとうございます。著者・ごとうひろみちに興味を持ってくれたあなたのために、詳しい自己紹介を←ここでしていますので、どうぞご覧ください。

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください