これまで、オーストラリア医学部の最終学年の研修である、麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科、内科、救急医療の話をしてきた。
そして、次のテーマである「オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと」について話を進めている。
前々回の記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(医療行為)』では、オーストラリアの医学部を卒業するには医療行為の基本を習得しなければいけない、ということを書いた。
前回の記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(課外活動)』では、医療行為の習得だけでなく課外活動も必須、ということを書いた。
そして、3つ目のハードルとなるのが、客観的臨床能力試験である。
客観的臨床能力試験は、英語で Objective Structured Clinical Examination(OSCE)と呼ばれる。学生は、患者さん(ボランティア)と採点者(医者)がいる部屋に入り、約10分間で課された課題をこなさなければならない。
医学部最後の臨床試験であるため、最終学年で行なった研修(麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科(耳鼻咽喉科)、内科(循環器内科)、救急医療)だけでなく、先住民医療、眼科、老人科、リウマチ科、精神科、産婦人科、小児科など4年間すべての研修が採点の対象となる。また、たった数年の研修ですべての症例に出会うことは不可能なので、それ以外の病気については自分で学習しておかなければならない。縫合が出てくるかもしれないし、肩甲難産、憂鬱病の問診、おぉ、考え始めたらキリが無いぐらい。試験に出てくる可能性があるシナリオの数が、目眩がするほど膨大なのだ。
うちの大学(西オーストラリア大学)のOSCEは、16のシナリオ(試験中、学生が部屋から部屋へと移動するので、駅を意味するwステーションと呼ばれる)が用意されている。1つのステーションに割り当てられている時間は10分。最初の2分間で、部屋にドアに貼られているシナリオと課題を頭に入れる。2分間が過ぎると笛が鳴り、学生は部屋に入って患者さんに挨拶する。そして、8分間の間に課題を可能な限りこなす。
16のシナリオを同級生がコメント付きでまとめていたので、ここでシェア。
次の動画は、タスマニア大学・医学部の女の子だけど、うちの大学の客観的臨床能力試験だけでなく、どこの大学でも使えるアドバイスだと思うので、ぜひ参考にしてほしい。
試験直前のツイッターがこちら。
これから、オーストラリア医学部の最終実技試験(OSCE)が、チャーリー病院で行われます。夢のスタートラインに立てるように、真剣に全力で楽しみます!それまでは、病院の裏でひっそりとお茶をすすります。 pic.twitter.com/ir2jCIaDxi
— ごとうひろみち (@iTELL_) 2018年9月21日
試験直後のツイッターがこちら。
3時間にも及ぶ実技試験は、全部で16ステーション。楽しもうと全力を尽くしたけど、小児蘇生で頭が真っ白に。OSCEは苦手分野。たぶん、追試だろうなぁ。予想以上に成績が悪ければ追試もなしで留年決定(月曜日の筆記試験が満点でも)。気持ちを切り替えるためにジョギングします。外はいい天気。
— ごとうひろみち (@iTELL_) 2018年9月21日
追伸:OSCEを終えて分かったことがある。OSCEのシナリオがより現実的なものになっている、ということだ。例えば、過去問は「心臓発作の治療法」を知っていればよかったのだが、これからのOSCEは「病院から離れたところで暮らしている心臓発作の患者さんをどうやって治療するのか」などを考え、その場で患者さんと意思疎通を図らなければならない。つまり、治療法を知っているだけではだめで、患者さんの立場に立って医療行為を行なわなければならないのだ。これは、実際のお医者さんが行なっているもので、スキルの習得までにとても時間がかかるものである。ぼくは過去問をパスできるような勉強をしていたので、正直ボロボロの成績だった。机の前で教科書を読んでいるだけでは、医学部が卒業できないようになっているのだ。しくしく。でも、人は傷つきながら学んでいくんです。
オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと
1.医療行為
2.課外活動
4.筆記試験