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オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(筆記試験)
これまで、オーストラリア医学部の最終学年の研修である、麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科、内科、救急医療の話をしてきた。
そして、次のテーマである「オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと」について話を進めている。
記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(医療行為)』では、オーストラリアの医学部を卒業するには医療行為の基本を習得しなければいけない、ということを書いた。
記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(課外活動)』では、医療行為の習得だけでなく課外活動も必須、ということを書いた。
前回の記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(客観的臨床能力試験)』では、3時間にも及ぶ臨床能力試験があることを説明した。
そして、4つ目のハードルとなるのが、筆記試験である。
医学部を卒業するのに避けて通れないのが、最終筆記試験である。いまのところ、オーストラリアには医学生に共通の医師国家試験が存在しない。つまり、医学生はそれぞれの大学が課す試験をパスすることが出来れば、医師になることができる。
うちの大学(西オーストラリア大学)の試験は、4時間に及ぶ筆記試験で、50ページの記入問題と120問の選択問題がある。前述した客観的臨床能力試験は3時間だったが、筆記試験はさらに1時間多い。体力勝負でもある。
試験直前のツイッター
オーストラリア医学部、最後の試験会場。開始は9時からだけど、8時に到着。休日だから交通手段の万が一に備えました。4時間にもわたる試験を楽しむために、オーストラリアいち綺麗だと言われるUWAのキャンパスをゆっくりと散歩しますか。 pic.twitter.com/Nm76qTJwIF
— ごとうひろみち (@iTELL_) 2018年9月24日
試験直後のツイッター
間違いなく、生涯一難しい試験だった。不勉強なのが原因なんですけど。そんなことより、ビーチ、ビーチ!
— ごとうひろみち (@iTELL_) 2018年9月24日
出題される範囲は、医学部4年間で学んだ全てである。
医学部では膨大な量の情報を勉強するので、試験対策を練るのが大変である。全てを網羅する時間はない。絶対にない。なので、賢く勉強しなければいけない。そこで、助け舟となるのが、医学部のガイドラインである。
ガイドラインを読むと、医学生が知っておかなければいけない病気(つまり、臨床所見からマネジメントまで)が表記されている。このガイドラインに従って、最終筆記試験の対策を練るのが必須となる。
病気のリストに加え、臨床所見のリストや医療検査リストなども試験対策のヘルプとなる。長いリストを見ると、医者になるのは大変なんだ、って思います。素直に。
病気のリスト
臨床所見のリスト
医療検査リスト
オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと
1.医療行為
2.課外活動
3.客観的臨床能力試験
4.筆記試験
5.インターン準備コース
オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(客観的臨床能力試験)
これまで、オーストラリア医学部の最終学年の研修である、麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科、内科、救急医療の話をしてきた。
そして、次のテーマである「オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと」について話を進めている。
前々回の記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(医療行為)』では、オーストラリアの医学部を卒業するには医療行為の基本を習得しなければいけない、ということを書いた。
前回の記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(課外活動)』では、医療行為の習得だけでなく課外活動も必須、ということを書いた。
そして、3つ目のハードルとなるのが、客観的臨床能力試験である。
客観的臨床能力試験は、英語で Objective Structured Clinical Examination(OSCE)と呼ばれる。学生は、患者さん(ボランティア)と採点者(医者)がいる部屋に入り、約10分間で課された課題をこなさなければならない。
医学部最後の臨床試験であるため、最終学年で行なった研修(麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科(耳鼻咽喉科)、内科(循環器内科)、救急医療)だけでなく、先住民医療、眼科、老人科、リウマチ科、精神科、産婦人科、小児科など4年間すべての研修が採点の対象となる。また、たった数年の研修ですべての症例に出会うことは不可能なので、それ以外の病気については自分で学習しておかなければならない。縫合が出てくるかもしれないし、肩甲難産、憂鬱病の問診、おぉ、考え始めたらキリが無いぐらい。試験に出てくる可能性があるシナリオの数が、目眩がするほど膨大なのだ。
うちの大学(西オーストラリア大学)のOSCEは、16のシナリオ(試験中、学生が部屋から部屋へと移動するので、駅を意味するwステーションと呼ばれる)が用意されている。1つのステーションに割り当てられている時間は10分。最初の2分間で、部屋にドアに貼られているシナリオと課題を頭に入れる。2分間が過ぎると笛が鳴り、学生は部屋に入って患者さんに挨拶する。そして、8分間の間に課題を可能な限りこなす。
16のシナリオを同級生がコメント付きでまとめていたので、ここでシェア。
次の動画は、タスマニア大学・医学部の女の子だけど、うちの大学の客観的臨床能力試験だけでなく、どこの大学でも使えるアドバイスだと思うので、ぜひ参考にしてほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=SX5Z2-Szgg0
試験直前のツイッターがこちら。
これから、オーストラリア医学部の最終実技試験(OSCE)が、チャーリー病院で行われます。夢のスタートラインに立てるように、真剣に全力で楽しみます!それまでは、病院の裏でひっそりとお茶をすすります。 pic.twitter.com/ir2jCIaDxi
— ごとうひろみち (@iTELL_) 2018年9月21日
試験直後のツイッターがこちら。
3時間にも及ぶ実技試験は、全部で16ステーション。楽しもうと全力を尽くしたけど、小児蘇生で頭が真っ白に。OSCEは苦手分野。たぶん、追試だろうなぁ。予想以上に成績が悪ければ追試もなしで留年決定(月曜日の筆記試験が満点でも)。気持ちを切り替えるためにジョギングします。外はいい天気。
— ごとうひろみち (@iTELL_) 2018年9月21日
追伸:OSCEを終えて分かったことがある。OSCEのシナリオがより現実的なものになっている、ということだ。例えば、過去問は「心臓発作の治療法」を知っていればよかったのだが、これからのOSCEは「病院から離れたところで暮らしている心臓発作の患者さんをどうやって治療するのか」などを考え、その場で患者さんと意思疎通を図らなければならない。つまり、治療法を知っているだけではだめで、患者さんの立場に立って医療行為を行なわなければならないのだ。これは、実際のお医者さんが行なっているもので、スキルの習得までにとても時間がかかるものである。ぼくは過去問をパスできるような勉強をしていたので、正直ボロボロの成績だった。机の前で教科書を読んでいるだけでは、医学部が卒業できないようになっているのだ。しくしく。でも、人は傷つきながら学んでいくんです。
オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと
1.医療行為
2.課外活動
3.客観的臨床能力試験
4.筆記試験
5.インターン準備コース
オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(課外活動)
これまで、オーストラリア医学部の最終学年の研修である、麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科、内科、救急医療の話をしてきた。
そして、次のテーマである「オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと」について話を進めている。
前回の記事『オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(医療行為)』では、オーストラリアの医学部を卒業するには医療行為の基本を習得しなければいけない、ということを書いた。
医療行為に続く、ふたつ目のハードルとなるのが、課外活動である。
これは、ぼくが1年生の時に触れたもので(過去記事『オーストラリアの医学生が勉強以外にやっている課外活動』を参照)、 医学生はPLACES と呼ばれるテーマにおいて活動していることを示さなければならない。
PLACESとは、医者が果たす6つの責務である、Professional, Leader, Advocate, Clinician, Educator, Scholar の頭文字を併せたものである。
医学部からガイドラインを渡されるので、そのガイドラインに沿った活動を行い、ポイントで評価してもらう。卒業までに最低300ポイント(各テーマ最低50ポイント)を獲得しなければいけない。
この課外活動は、医学部の試験とは直接関係が無いので時間の無駄に感じられることもある。それでも、長い目で見れば、医者としての役割をハッキリと認識できる機会である。この認識と自己分析がしっかりしている人は、自分がどんな方向性をもって医学の道を進んでいくかを決めることができ、人生という路頭に迷うことが減る、ような気がする。
以下、医学部のガイドラインを抜粋。海外の医学部に進学したい・している人は、ぜひ参考にしてみてください。
Professional
Leader
Advocate
Clinician
Educator
Scholar
オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと
1.医療行為
2.課外活動
3.客観的臨床能力試験
4.筆記試験
5.インターン準備コース
オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと(医療行為)
これまで、オーストラリア医学部の最終学年の研修である、麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科、内科、救急医療の話をしてきた。
これから、「オーストラリアの医学部、卒業に必要な5つのこと」について記事を書いていく。
まず最初は、医療行為、である。
オーストラリア医学部の最終学年は、99%の時間を病院で過ごす。その忙しい時間の中で、病院やクリニックのお医者さんや看護師さんの指導の下、様々な医療行為を患者さんに施していく。
うちの大学(西オーストラリア大学)の医学部は、ある一定の医療行為をノルマとして医学生に課している。つまり、このノルマを達成していない学生は卒業ができないようになっている。医療行為をこなすだけでなく、医療行為をなぜ行っているかなどの理解度も指導医にチェックされる。
医療行為が上手に行えなかったり、医療行為のことを理解していない場合、医学部が用意している書類に指導医からオーケーをもらえないようになっている。オーケーをもらえたらノルマ・クリアである。中には、トライしたくても患者さんに断られてしまうものや、なかなか巡り会わないものがある。そのため、医学生はスタッフと患者さんに積極的なアプローチをかけなければいけない。
それでは、ぼくが医学部最終学年の研修中に実際に行ない、指導医にオーケーをもらった医療行為を紹介する。
注意:以下の動画には医療行為が説明されています。血液などを見て気分が悪くなるという方はご注意ください。
Handwashing
https://www.youtube.com/watch?v=CIS_5F_tkcI
Eyelid Eversion
https://www.youtube.com/watch?v=1RBoDT1zCh4
Instill Eye Drops
https://www.youtube.com/watch?v=HYl9bqh-gAE
Optic Nerve Assessment
https://www.youtube.com/watch?v=wPzCA9k8GRQ
Slit Lamp Examination
https://www.youtube.com/watch?v=ULZp3tKsVbU
Visual Acuity
https://www.youtube.com/watch?v=kMwy06mAV5U
Backslab Plastering
https://www.youtube.com/watch?v=pGxxKH4wSqs
Bladder Catheterisation - Female
https://www.youtube.com/watch?v=at7BK38ujAE
Bladder Catheterisation - Male
https://www.youtube.com/watch?v=oSEEFV5wvbY
IM Injection
https://www.youtube.com/watch?v=rKOyNSR4ByA
SC Injection
https://www.youtube.com/watch?v=8MPdw-0HbTg
IV Drug Administration
https://www.youtube.com/watch?v=ZTLB3Trr3bM
Nebuliser / Spacer Therapy
https://www.youtube.com/watch?v=hjdIyyC8T-E
Pelvic Speculum...
オーストラリアの医学部、最後の研修先は救急医療
これまで、オーストラリア医学部の最終学年の研修である、麻酔科、緩和ケア、腫瘍科、脳外科、へき地医療、外科、内科の話をしてきた。そして、ついに、ついに、オーストラリア医学部の最後の研修を迎えた。
最後の研修先は、救急医療だ。お世話になる病院は、外科研修の時にお世話になった Joondalup Hospital。自分の家から約1時間かかるところにある病院で、通勤に時間を取られてしまうのが残念だが、実際に研修に行った友人から「とてもいいチームだよ」と聞いているので、期待に胸を躍らしている。
出典: Joondalup Hospital
話は脱線しますが、ぼくはアメリカの医療ドラマ「ER緊急救命室」が好きです。ジョン・カーターが成長していく姿を自分に重ねたりしてしまいます。素晴らしいドラマだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=XywGgYqN1JA
それでは、これまでのように、救急医療の学習ガイドラインを読んでいこうと思う。
救急医療の研修で学ぶことが期待されている概要はこうなっている。
医学部卒業したらインターンになるわけだから、インターンがやっていることを率先してやりましょうと書かれている。救急医療センターに来た患者さんの問診、身体検査、鑑別診断を行って、先輩のお医者さんに報告を行い、自分が必要だと考える医療検査、治療、フォローアップを議論し、お医者さんの判断を仰ぐことになる。
学生気分のままをキープしているぼくには、責任がとても重く感じられるが、遅かれ早かれ医者になればやらなければならないことだ。学生のうちにたくさんのフィードバックをもらって、いいお医者さんになる準備をしようと思う。もちろん、学生であることの限度をわきまえたうえで。
救急医療でよく診られる病気はこんなものだと予想される。
しかし、患者さんは、診断が書かれた札を首から下げて、救急医療センターに来るわけではない。つまり、救急医療の医師は、次のような症状を観ながら、診断、検査、治療、フォローアップを行うことになる。
医学生は救急医療センターでつぎのような検査・治療を行うことが期待されている。
救急医療の研修の成績は、出席、二次救命処置のワークショップの合格、そして、学生が実際におこなった2人の患者さんのケアの適正さ、をもとに判断される。
実際に点数が付けられるのは、患者さんのケアである。
二次救命処置のワークショップは丸一日のワークショップだ。
https://www.youtube.com/watch?v=XW8-t3Dk898
推薦教科書は、次のようになっている。
オーストラリア医学部の最後を飾るに相応しい研修先だと思う。日中だけでなく夜のシフトもあるので大変かもしれませんが、全力で楽しみながら学びます!
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オーストラリアで総合医になる必勝方法
ぼくには、「オーストラリアで温かい医者になる」という夢がある。この夢の旅路に就くまでのその道は、控えめに言っても、紆余曲折で満ち溢れていた。
ごとうひろみちの紆余曲折の人生に興味のある方はこちらをどうぞ。
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オーストラリアの医学部を一年休学した後に卒業し、ぼくは現地の病院に就職した。現在は、医師3年目のペーペー Registrarをやっている。通常、オーストラリアで言うRegistrarは「専門医になるための訓練を受けている医師」を指すのだが、ぼくはいまService registrarという少し変わったポジションで働いている。Service registrarは、特定の専門のトレーニングプログラムに入っているわけではないが、病院側が働き手が一時的に足りていない分野に送り込むRegistrarのことを指す。オーストラリアの医師のハイラルキーに興味がある方は、過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』をどうぞ。
インター医師よりも経験はあるが専門をまだ決めかねている医師は、このService registrarとして働くことが多い。そして、Service registrarとしてインターン医師よりは重い責任を負いながら、どの専門に進むかを考えている。どの専門に進むのかを決める要因は千差万別で、流行りの専門を選ぶ医師がいたかと思えば、朝の問診が嫌いだからという理由で救急医療を選ぶ医師がいたりする。色々な思惑と背景を持った医師がいる以上、これさえ押さえておけば専門医トレーニング選びに後悔しない、というものはない。
ちなみに、医学部に入ったときにこんなフローチャートが授業で出てきたが、あながち間違いではないような気がする。専門を迷われている方は参考にするといいかもしれない(が、あまり気にする必要もないと思う)。
オーストラリアのインターン医師は、大きく分けて外科、内科、救急、精神科のローテーションを通じて医師としての一般的なスキルを磨く。3年という限られたインターンシップの期間中に、すべての科を回ることは不可能である。あらかじめ「~科で働きたいなぁ」と思っている医師は、病院側にその科に優先的に回してもらうことをお願いする。また、「~科には興味がない」ということを病院側に伝え、それ以外の科に回してもらうこともできる。
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