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オーストラリアの医学部、最終学年の2発目の研修先は緩和ケア
医学部最後の年。一発目の研修先は麻酔科だった。これまでの医療研修のなかでも、熱心に教えてくれるお医者さんが多い専門科研修だった。
麻酔科の研修が終わると、間髪入れずに緩和ケアの研修が始まる。麻酔科で学んだ薬物がダイレクトに応用されているので、学習が一層強化される。
ぼくが配属されたのは、Royal Perth Hospitalという、パースのど真ん中にあるTeaching Hospitalである。
緩和ケアの概要をざっと見ておこう。
緩和ケアの研修は1週間しかないが、医学生に期待されている臨床体験は次のようなものである。
卒業試験に出題される範囲は、次のようになっている。(試験に出るとは書いていないけど・・・)
緩和ケアの臨床研修の成績は、次の課題となっている。丸で囲まれている部分は、卒業試験(筆記と実技)の説明をしている。
緩和ケアは他の専門科とは異なり、患者さんを病気の対象としてではなくBiopsychosocial-spiritual beingとして捉え、その枠組みの中で医療がどんなサービスを提供できるかを考える医療である。目の前の木を見るだけでなく、その木が属している森も見なければいけない。言うのは易しだが、行うは難しだ。
オーストラリアの医学部、麻酔科の臨床研修で役に立つ教材
過去の記事『オーストラリアの医学部、最終学年の一発目の研修先は麻酔科』で紹介したように、ぼくはいま Fiona Stanley Hospital の麻酔科で研修をしている。
オペ室に行く前に、パシャ。
(自撮りはしないぼくだが、
読者のリクエストには弱い)
朝6時30分ごろ家を出て、マンデュラ行きの電車に乗って、マードック駅まで行く。早い時間なので、電車の車両には数人しか乗っていない。
電車のなかでは、もちろん、麻酔科の本を読んでいる。
今回の記事は、ぼくが実際に読んで役に立ったと思う麻酔科の書籍を紹介する。専門医レベルではなく医学部を卒業することが目的のぼくは、書籍を選ぶときに、次の3つの点を重視している。もしあなたが同じように書籍を選んでいるのであれば、必ず役に立つ書籍なのでぜひとも手に取ってみてほしい。
詳細ではなく全体図を伝えている書籍
薄ければ薄いほどいい
7回読み出来るもの(☚これは、山口真由さんが推薦している勉強法で、2018年からぼくも取り入れた勉強法である。記憶力に劣るぼくにはとてもパワフル勉強法となっている。興味がある方は、この記事の下にリンクを貼っています)
麻酔科の勉強に役に立った書籍は次の3つである。
Lecture Notes - Clinical Anaesthesiaは実質100ページぐらいの書籍だが、麻酔科の基礎知識、麻酔用具の説明、そして救急の説明などがなされている。著者がどんな意図をもって書いているかが分かるので、何を覚えればいいかがスーッと入ってくる。一番のお勧めである。
Lecture Notes - Clinical Anaesthesia
Oxford Handbook of Anaesthesiaは、麻酔科の知識がゼロの人にもわかりやすく説明されている。ただ、上の書籍よりは臨床医向けの書籍かもしれない。麻酔科に興味を持っている人は、こちらのほうがいいかもしれない。
Oxford Handbook of Anaesthesia
Oxford Handbook of Clinical Specialtiesは、沢山ある専門医の全体図を伝えることを目的としている。そのため、麻酔科の細かい知識やスキル、そして卒業試験に出題される問題を網羅されていない(と思う)。しかし、この本を読めば、出発点と終着点を手早く把握できるため、「あとは中間地点を埋めていけば卒業できる」と安心することが出来る。膨大の量の知識を詰め込まなければいけない医学生にとって、無駄な勉強をしていないという感情を持つことは、精神的に非常に大事なことなのだ。
Oxford...
オーストラリアの医学部、最終学年の一発目の研修先は麻酔科
医学部最後の年。一発目の研修先は麻酔科である。
ぼくが配属されたのは、Fiona Stanley Hospitalという、パースにある病院の中では一番新しい Teaching Hospitalである。2年生のOSCE試験の時に行ったことがあるだけで、まだ研修をしたことは無い。設備が素晴らしいと聞くので、どきどき、どきどき。
麻酔科の概要をざっと見ておこう。
ふむふむ、教育のゴールがある程度限定的に書かれている。何を勉強すればいいのかがわかるので、大変助かる。しかし、麻酔科の深い勉強を一度もしたことが無いので、不安ではある。
気になる、臨床研修中のスキル審査にも目を通しておこう。
麻酔科研修中に実施しなければならないスキルは、こんな感じである。
卒業試験に出てくると予想される範囲は、こんな感じである。もちろん、医学部がそう名言しているわけではないが、麻酔科にたった2週間しかいれないわけだから、医学生が路頭に迷うわ無いように、出題内容を暗に示しておく必要がある。
ぼくは、2017年に医学部を休学している。ということは、初めてなのは、病院だけでなく、一緒に研修する同級生も、初めての顔合わせとなる。どきどき。どきどき。
オーストラリアの医学部、最終学年の臨床カリキュラム
オーストラリアで温かい医者になるという夢のスタートライに立つまで、残り1年となった。
思えば、遠くへ来たものだ。
ぼくが通っている西オーストラリア大学(UWA)の医学部最終学年のカリキュラムを、ざっと見ていこう。
全てが臨床研修で、30週間のカリキュラムとなっている。6つの専門科研修があり、ひとつの科に研修するのは、たったの5週間である。
研修先は、APPO (Anaesthesia/Pain/Palliative Care/Oncology)、Selective(ぼくはNeurosurgeryを希望した)、Rural General Practice、Surgery、Internal Medicineの6つである。どこの病院に行くかは、直前にならないと分からない。人数が多いから、配属する手続きが時間がかかるのだと思う。
ちなみに、ぼくはF2グループに所属している。
とっても気になる、医学部卒業のためにクリアしなければならない試験などをざっと見ていく。
このほかに、課外活動のポイントも300点を稼がなければならない(課外活動の詳しい内容は、過去記事「オーストラリアの医学生が勉強以外にやっている課外活動」をどうぞ)。上の表に書いているが、ぼくはすでに269点を持っている。しかし、全てのカテゴリーで30ポイント無ければいけないので、最低70点を稼ぐ必要がある。これは結構大変なことである。そして、臨床スキル(例えば、採血など)も実施しなければならない。
卒業試験は、学年の最後に用意されている。ペーパー試験と実技試験だ
卒業試験、臨床スキル、課外活動のほかにも、臨床研修中のスキルも審査の対象となる。臨床研修のスキル審査はとても大事である。というのも、臨床研修のスキル審査の点数は、卒業試験の点数の50%と同じだからである。
臨床研修中のスキル審査は、Global Professional Assessment、Clinical & Professional Rating、In-training Assessmentがある。成績に反映されるのはIn-training Assessmentのみだが、それ以外のもの大事である。というのも、不適切という評価をもらった時点で、留年が決定するからだ。
よし、医学部最後の年だ。
楽しむぞ!!
オーストラリアの医学生が夏休みに書いた、神経科研修のエッセー
過去の記事『オーストラリア医学部の最終学年が始まる前にやらなければいけないこと』でも触れましたが、オーストラリアの医学生は最終学年を始める前に、Elective Placementというユニットをパスしなければいけない。
ぼくは当初、iPS細胞と脳神経科に興味があったこともあり、慶応義塾大学と京都大学の大学病院の神経科で研修することを考えていた。しかし、提携大学の生徒しか受け入れていないと、ぼくは門前払いされてしまった。それでも、うちの大学(西オーストラリア大学)の医学部に提携してもらうように動いたのだが、結局時間切れで、地元の病院であるSir Charles Gardiner Hospitalの神経科のAllan Kermode先生のもとで研修を受けることになった。
1年間も医学部を休学していたせいで、毎日が大変だった。とにかく、医療チームに貢献しようとしても、何もできないのだ!!医学生としてのぼくの能力と知識は、神経科チームの役には役に立たなかった。採血やカニューレなどのチャンスがあれば、率先的に手を挙げてやらせてもらったのだが、それ以外は、お医者さんの診断や治療の話に、うんうんと耳を傾けるぐらいだった。そして、その情報のほとんどが、右から左へと流れていった。音もたてずに。それでも、得るものも多かったのも事実である(下のエッセーで触れています)。
Elective Placementは、エッセーの内容でパスか、そうでないかが決まる。よっぽどのこと(例えば、故意に医療ミスを起こしたとか、研修に行かなかったとか)がない限り、エッセーを1500~2000Wordsで書いて提出すれば、問題なくパスできる、はずである。
さて、そろそろ始める4年生に向けて、ふんどしを締め直さなければいけない。
↓↓エッセーの下書きです。スペルやグラマーチェックなどの手直しを入れたら、提出します。
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ごとうひろみちの紆余曲折の人生に興味のある方はこちらをどうぞ。
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オーストラリアの医学部を一年休学した後に卒業し、ぼくは現地の病院に就職した。現在は、医師3年目のペーペー Registrarをやっている。通常、オーストラリアで言うRegistrarは「専門医になるための訓練を受けている医師」を指すのだが、ぼくはいまService registrarという少し変わったポジションで働いている。Service registrarは、特定の専門のトレーニングプログラムに入っているわけではないが、病院側が働き手が一時的に足りていない分野に送り込むRegistrarのことを指す。オーストラリアの医師のハイラルキーに興味がある方は、過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』をどうぞ。
インター医師よりも経験はあるが専門をまだ決めかねている医師は、このService registrarとして働くことが多い。そして、Service registrarとしてインターン医師よりは重い責任を負いながら、どの専門に進むかを考えている。どの専門に進むのかを決める要因は千差万別で、流行りの専門を選ぶ医師がいたかと思えば、朝の問診が嫌いだからという理由で救急医療を選ぶ医師がいたりする。色々な思惑と背景を持った医師がいる以上、これさえ押さえておけば専門医トレーニング選びに後悔しない、というものはない。
ちなみに、医学部に入ったときにこんなフローチャートが授業で出てきたが、あながち間違いではないような気がする。専門を迷われている方は参考にするといいかもしれない(が、あまり気にする必要もないと思う)。
オーストラリアのインターン医師は、大きく分けて外科、内科、救急、精神科のローテーションを通じて医師としての一般的なスキルを磨く。3年という限られたインターンシップの期間中に、すべての科を回ることは不可能である。あらかじめ「~科で働きたいなぁ」と思っている医師は、病院側にその科に優先的に回してもらうことをお願いする。また、「~科には興味がない」ということを病院側に伝え、それ以外の科に回してもらうこともできる。
ぼくは医師として以下のローテーションを回ってきた。
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