まとめ
これまで精神科で実際に病歴問診を行った
患者さん4名について書いてきた。
(ケース1:男性A、45歳、薬物と幻聴と統合失調症)
(ケース2:女性B、37歳、失禁と夢とうつ病)
(ケース3:女性C、47歳、想像妊娠と妄想型統合失調症)
(ケース4:男性D、65歳、怒りと妄想型統合失調症)
それぞれの記事の冒頭に書いたように、
患者さんとのやり取りを紹介することに
目的のようなものはなかった。
物語を傍観するような形で
臨床研修を振り返ってみるつもりだった。
でも、興味のあることには
鼻を突っ込まずにいられない性格は変えられず、
ときおり自分の考えなども加えながら
臨床研修の経験を書いてきた。
ぼくは少年時代から
精神異常者についての本をたくさん読んできた。
日本語の本も読んだし、
英語が読めるようになると洋書もいろいろ読んだ。
本以外にも、
うまく説明できないが
決定的に違った質の心を持った人たちにも
実際出会ってきた(数は非常に少ないのだが)。
異質と言っても、
町の中で大声をあげて叫んでいる
という類のものではない。
その異質なものは、
薄い透明の膜のようなもので、
その人の近くまで近づかなければ気づかない。
そして、近づいて触れても、
それが何なのかよくわからない
という類のものである。
今回の臨床研修で4名の患者さんに出会ったが、
この膜の存在を感じることはなかった。
Dさんに似たようなものを感じたことは確かだが、
それも少し違うような気がするのだ。
ぼくはまれに体験することがある
この異質なものに非常に興味がある
(それが良いものなのか
悪いものなのかということには
あまり興味がない)。
いまだにそれが何なのかよく分からないし、
医師としてどう対処すればいいのか
皆目見当もつかない。
また、自分の中に
この異質なものが眠っているのか
ということに考えを巡らせることもある。
最後に、
精神科の臨床研修の機会を設けてくれた
大学、指導医師のアンドリューを含む病院のスタッフ、
そして4名の患者さんたちに
ここで感謝の気持ちを述べたい。
皆様のおかげで
とても貴重な体験をすることができた。
ぼくがこれからどのような医学の道を
あゆんでいくのかわからないが、
この体験が無駄になることがないよう
日々精進していきたいと思う。
2015年2月20日
出典: www.ibiblio.org