ぼくが医者としての初めて働き始めたのは、ハリウッド私立病院の一般内科だった。
出典:nspm.com.au
毎朝6時ごろ起床し、ベッドからノソノソと出て、ドライフルーツがたくさん入ったシリアルに牛乳をなみなみ注いで、イングリッシュ・ブレックファーストの紅茶と一緒にいただく。出勤直前にバナナも一本平らげて、汗をかいてもいいようにスポーツウェアに着替えたぼくは、スワン川のほとりを自転車で30分ぐらい走らせる。波風の影響で、風を真正面から受けて体が鉛のように重く感じる時もあれば、背中に追い風の力を感じて翼がついているかのように自転車を飛ばすこともあった。
毎日、仮装されているエリザの銅像に「おはよう」と言い、
インスタ映えする写真を撮ろうと朝早くからボート小屋に来ている旅行客の横を颯爽と自転車で走り抜け、病院へ向かった。
朝7時頃に病院に到着し、セキュリティロックがかかった病院関係者専用の自転車置き場に自転車を置く。そのあと、病院内でシャワーを浴び仕事着に着替えて、病棟に向かう。
大体の病棟には医者専用の仕事部屋が用意されている。その部屋に置かれているコンピューターから、自分の上司のお医者さん(Consultantと呼ばれる)が担当している患者さんのリストを印刷する。
患者さんのリストをプリントするのは、毎朝の回診を終えた後に、やらなければいけない仕事を患者さんごとに書いておくためだ。例えば、心不全の患者さんのために心エコーの検査を予約したり、敗血症の患者さんの薬物治療のために感染症学のお医者さんのアドバイスを求めたり、などなどやることはたくさんある。
インターンはやることは多いが、大体は6つの項目に集約される。
(1)先輩のお医者さんと回診を行い、その記録を患者さんのノートに書き込む
(2)既存の薬の量や頻度を変えたり、新しい薬を投薬したり、薬を中止したりする
(3)X線、CTやMRI、血液の検査などを手配する(結果が出たら上司に報告する)
(4)専門のお医者さんにアドバイスを求める
(5)カニューレの取り換え、尿道カテーテルの取り換え、血液採取などの作業
(6)退院要約(Discharge summary)と退院後用薬物処方