Tag: 休学
著書第7弾『豪州永住権の手引き』
だいたい6ヶ月で取ってるね
かかっても1年以内だね
オーストラリアの永住権
あなたとコーヒーを飲みながら
交わすたわいのない会話は
実現することがあまりない
IELTS試験なんか
準備もせずに受けたから
Writingが0.5ポイント足りずに再受験
でも一番の誤算は
金魚鉢の中の金魚をつつくように
ぼくらを弄んだリーマンショック
1年以内に取れるはずの
オーストラリアの永住権が
無期延期になった
サイエンティストは
不景気が来るとカーペットの下にやられる
経済的お荷物、な仕事なのだ
無期延期になったことで
ぼくは希望も持たないまま
オーストラリアの医学部を受験した
合計で
3回受験し
3回合格した
永住権の認可は
3回目の合格に連れられて
嫌々そうにやってきた
4年半で取ってるね、永住権
もしあなたがそう言っていたら
ぼくはこんなに待つことができただろうか?
著書第6弾『豪州医学部受験必勝法』
オーストラリアで医者になる
そう心に刻み込んだのは
福島震災後のボランティアだった。
津波が無造作に積み上げた
瓦礫の下から漂ってくる
生き物の腐乱臭
蓋が空いたように
半分が宙に浮いている
鉄筋のビニールハウス
畳の上に座って
恥ずかしそうな笑顔を見せる
全裸の若い女性の写真
助けようとして
伸ばした手が届かずに
津波に飲み込まれていった奥様
自然はいまだに
ぼくの心に安らぎと怒りを
アンビバレンスを与える
オーストラリアの医学部
受験した日本人の話は見つからず
ぼくは独りで対策を練り始めた
受験会場に
ぼくの座るはずの椅子が
無かった共通一次試験
言いたいことも言えず
あまりにも情けなくて
泣きそうになった2次面接
3回受験して
3回合格した医学部
はやく医者になれ?
著書第5弾『サイエンティストのお仕事』
よく買い物に行った
スーパーの隣に
古びれたたこ焼き屋があった。
黄色のビニール屋根に
「大阪名物タコ焼き」と
赤色のゴシック体で書かれている。
70代ぐらいの女性の
少し骨が浮き出た手は
右へ左へ鉄板の上を走っていた。
いつも香りだけを
無料でいただいていたので
今日はたこ焼きを買ってみる。
おばちゃんの手は
いつものように
右へ左へ鉄板の上を走っていた。
「お待たせ」
ぼくは店前でパックを開けて
アツアツのたこ焼きを口に入れた。
口の中に広がった味は
ぼくが大阪で食べた有名なたこ焼きよりも
明らかに美味かった。
「おばちゃんのが一番美味いわぁ」
「ほんま?ありがとうぉ」
おばちゃんは手ぬぐいで顔の汗を拭いていた。
ぼくが和光の理研に移ってからも
おばちゃんのたこ焼きの味は
ランキングトップを走り続けている。
「タコ焼き」の看板を見るだけで
大阪の古びれたたこ焼き屋で食べた
Deepな味が脳裏によみがえる。
著書第4弾『豪州大学留学のすゝめ』
ジャカランダの花びらが舞う
大学のキャンパスを歩いていると
時間の流れがすこしだけ塩味になる。
ロマネスク様式の建物である
ウィンスロップホールの中に入ると
その味が甘味に変わる。
誰もいないサンケン・ガーデンで
自分ひとりだけの演劇を開いていると
クックバラが甘さに惹かれて寄ってくる。
天然の緑色絨毯のうえで
広辞苑並みの教科書を読んでいると
あたまの中が酸味に変わる。
卒業研究で徹夜した
研究室のピペットマンに触れると
苦味がぼくを刺激する。
あなたと喧嘩したベンチに
ひとり座って学生の往来を眺めると
時間に微かな旨みが加わる。
シェアメイトの友達と
深夜のドライブや魚釣りに
行くこともあった。
買わないのに
毎週日曜日には
一緒に近所のノミ市に行って
置かれている商品を眺めた。
夏休み中に帰国している友達の
食料品を勝手に食べて
たわいのない喧嘩もしてみた。
そんな友達も
いまでは家庭と子供がいる。
ぼくには誰がいるんだろう?
著書第2弾『語学る?留学る?』
How are you?
I am fine. Thank you.
And you?
語学留学する前は
こんな会話さえも
ぼくの頭には浮かばなかった。
英語を正しく喋らなければ
という緊張の呪縛から
心と頭がフリーズしていた。
正しく喋る前に
君はまず何を言いたいの?
と、あなたは聞きました。
少し俯いて考えてみると
18歳のぼくの中には
言いたことがなかった。
言いたいことがないのに
正しく喋るも間違って喋るもないんじゃない?
と、そばでゴロゴロしている猫さんは言った。
悔しかったぼくは
右手で顔を洗っている猫さんに
明日雨降るよ、と言った。
コーヒーでも煎れるね
と、あなたは言って
喧嘩の仲裁に入ってくれました。
何かを言いたかったぼく。
何も言いたいことが無かったぼく。
言う前にしなければいけないことに気づいたぼく。
異国の芝生に寝転んで
蒼き空を見つめながら
本を読むようになった語学留学時代。
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ごとうひろみちの紆余曲折の人生に興味のある方はこちらをどうぞ。
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オーストラリアの医学部を一年休学した後に卒業し、ぼくは現地の病院に就職した。現在は、医師3年目のペーペー Registrarをやっている。通常、オーストラリアで言うRegistrarは「専門医になるための訓練を受けている医師」を指すのだが、ぼくはいまService registrarという少し変わったポジションで働いている。Service registrarは、特定の専門のトレーニングプログラムに入っているわけではないが、病院側が働き手が一時的に足りていない分野に送り込むRegistrarのことを指す。オーストラリアの医師のハイラルキーに興味がある方は、過去記事『オーストラリアのインターン医師になったらやらなければならない6つのこと』をどうぞ。
インター医師よりも経験はあるが専門をまだ決めかねている医師は、このService registrarとして働くことが多い。そして、Service registrarとしてインターン医師よりは重い責任を負いながら、どの専門に進むかを考えている。どの専門に進むのかを決める要因は千差万別で、流行りの専門を選ぶ医師がいたかと思えば、朝の問診が嫌いだからという理由で救急医療を選ぶ医師がいたりする。色々な思惑と背景を持った医師がいる以上、これさえ押さえておけば専門医トレーニング選びに後悔しない、というものはない。
ちなみに、医学部に入ったときにこんなフローチャートが授業で出てきたが、あながち間違いではないような気がする。専門を迷われている方は参考にするといいかもしれない(が、あまり気にする必要もないと思う)。
オーストラリアのインターン医師は、大きく分けて外科、内科、救急、精神科のローテーションを通じて医師としての一般的なスキルを磨く。3年という限られたインターンシップの期間中に、すべての科を回ることは不可能である。あらかじめ「~科で働きたいなぁ」と思っている医師は、病院側にその科に優先的に回してもらうことをお願いする。また、「~科には興味がない」ということを病院側に伝え、それ以外の科に回してもらうこともできる。
ぼくは医師として以下のローテーションを回ってきた。
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