ライブ会場の広島文化学園HBGホールで知り合い、夕食を食べながら音楽の話で盛り上がった男性は家路につき、ぼくは広島の夜の街をひとり歩きながら、平和記念公園へと足を運んだ。
平和記念公園にたどり着く手前に、長田屋というお好み焼き屋さんがある。その隣ぐらいにパチンコ屋があるのだが、そのパチンコ屋を覗いているブロンドの女性がいた。
パチンコがどんなものか気になるのか、自動ドアのすこし前から店内を覗き込んでいた。ただ、少し近づきすぎたようで、自動ドアが開き、中から大音量の音楽とジャラジャラというパチンコ店特有のサウンドが流れ出てきた。
その女性は、自動ドアが開いたことにびっくりして、さも決まりが悪そうに、パチンコ店の前から早足に逃げて行った。
その光景を眺めていたぼくは、「パチンコに興味があるんですか?」と聞いてみた。日本語が分からないようで、ぼくは英語で同じような質問をしてみた。
彼女は「パチンコの存在を友達に教えてもらったんだけど、なんなのか分からないから、店の外から見てみようとしてたの。パチンコって何ですか?」というので、ぼくはパチンコの簡単な説明をして、実際にお店の中に入って、パチンコを彼女に説明した。
お店の中のたばこ臭さに面食らったようで、ぼくと彼女は店の外へと出た。ふたりは酸素を肺一杯に取り込むように、外で深呼吸を3回した。
彼女の名前は、クリスティーナ。ハンガリー人の女性で、いまはシンガポールでお仕事をしているらしい。
ハンガリーで有名な女性と言えば、バーバラ・パルヴィンだろうか?
出典:Pinterest
ぼくとクリスティーナは本通商店街を何の当てもなく歩きながら、「日本の野菜とフルーツが高い事」という話題について話をしていた。
本通商店街
出典:Wikipedia
10時を過ぎた本通商店街は、人がまばらにいるだけで、商店街の端から端が見渡すことができる。すれ違う人の中には、家出少女(多分)がいたり、占い師の言うことに耳を傾けるカップルなどがいた。
クリスティーナは、日本に来たのは初めてだそうで、これまで東京、名古屋などを回り、広島の後は、姫路と大阪に行って、シンガポールに戻るという。
なんとなく商店街の端まで来ると、クリスティーナが「Lonely Planet(地球の歩き方の海外版みたいなもの)にKobaというバーが紹介されているんだけど、一緒に行ってみませんか?生ライブもあるらしいです」というので、ぼくは「Why not?」と答えた。
Kobaだと思って入った1Fのお店はKobaではなかったらしく、店員さんが「Koba?」と言い、クリスティーナが「Yes」と答えると、日本語で「3Fです」と答えが返ってきた。お目当てのKobaは3Fだった。
お店に入ると、カウンター席とテーブル席があり、店の奥にはロフトへと通じる階段がある。店員の女性に「お二人様ですか?」と聞くので、「はい、そこの道端で会いました」というと、笑いながら「ロフトの席が空いてますよ」と教えてくれた。ぼくらは階段を上がったすぐの席に着いた。
出典:TripAdvisor
お店の中には、80~90年代のロック音楽がかかっていて、ぼくにはとても素晴らしい空間のように思えた。生演奏が無かったのは残念だったが、今日はDream Theaterのライブを観たので、それはそれで良かった。
カウンターには、モトリークルーのメンバーがお店に来た写真が貼られていた。マスターらしき男性から、「最高のTシャツ着てるね!」と褒められた。
出典:TripAdvisor
クリスティーナはビールを注文し、ぼくはジンジャーエールを注文した。そして、クリスティーナは何の前触れもなく、日本で使われる「ひらがな」「カタカナ」「漢字」について質問をしてきた。その他に特筆するほどの話はないが、お店にガンズのNovember Rainのライブの音楽がかかると、ぼくとクリスティーナはその音楽に耳を傾けた。
Kobaを後にしたぼくらは、さらに人が少なくなった商店街を歩いた。ぼくは全てのジェントルマンがそうするように、クリスティーナをホテルの前まで送っていった。
「ビールおごってもらったし、明日昼食でも一緒にどうですか?」とクリスティーナに聞かれたので、「う~ん、福岡に帰るバスの時間を確かめてから返事するよ。」と答えて、ぼくのメルアドを渡した。
ぼくは「ハンガリーではさよならは何回ほっぺキスを交わすの?」とクリスティーナに聞き、左右に1回ずつキスをして、彼女はホテルに入っていった。